ところが、それもかなり難しい。再エネ発電増によって卸電力市場価格が下がっているので、火力発電事業が儲からなくなっている。
結局、南北送電網の強化が「唯一の解」であり、「連邦政府としてはそれに全力を尽くすだけ」なのだ。まさに薄氷を踏みながらのエネルギー革命の行軍であることが感じられる。
日独共通の失敗要因は太陽光バブル発生の放置
ドイツでは、太陽光発電設備が10~11年に異常な伸びを見せた。これは「予想を遥かに超えたもの」。当時、中国産の安い太陽光発電設備が大量に入り込んで価格は下がったのだが、買取価格を高止まりさせたまま放置。不況だったことも手伝って、“20年買取保証という魅力”に満ちた太陽光発電市場に大量の投資資金が流入した。
再エネ政策の失敗とは、「太陽光発電の加速度的な導入を抑えなかったこと」で、「予想を超える賦課金の増大と系統容量の不足」に陥ったことだ。彼らは、「太陽光発電の導入を過熱させないよう適切な施策の進め方をしていたら、それほど大きな問題にはならなかった」と述懐していた。
日本のFITはまだ3年弱しか経過していないが、“太陽光バブル”で失策が表沙汰になったのが昨秋。送電網が整備されていないうちに再エネ発電の普及が進んでしまうのを止めなかった。「日本で再エネを促進するのであればドイツの轍を踏んではならない」との助言もあったが、今さら虚しい。
太陽光発電は天候次第で系統容量を超えるほど発電してしまうので、系統全体の安定供給を維持するには系統増強対策が必要となる。ドイツは12年に太陽光発電の買取総量に上限を設定したが、それはそうした理由による。
再エネ政策面でのドイツの失敗と日本の失敗は、太陽光発電の過剰な導入を許した点で共通している。ドイツでは、太陽光発電設備の増設は12年をピークに大幅に減少し、今後とも減少傾向で推移していくと見込んでいる。
ちなみに、連邦環境省筋は08年に太陽光発電の買取総額が急増することに警鐘を鳴らしていたらしい。ドイツ国内にも、太陽光バブル発生の数年前から冷静な眼があったのだ。しかし、それに耳が傾けられることはなかった。