Wedge REPORT

2015年4月27日

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石川和男 (いしかわ・かずお)

NPO法人社会保障経済研究所理事長

1989年東京大学工学部卒業後、通商産業省入省、電力・ガス改革に携わる。退官後、内閣官房企画官、規制改革会議WG委員などを歴任。

根本的な解決策が見出せない
エネルギー貧困と事業の空洞化

 消費者センターの幹部が語るには、「家計に占める電気料金の割合は2~4%程度」なので、再エネ賦課金の増加による電気料金上昇がドイツ国民の生活に大きな影響を与えるわけではなく、エネルギーヴェンデの大目的を達成するためならばコスト増を「許容する土壌がある」そうだ。

 しかし実際には、家庭需要家を中心に「エネルギー貧困」という問題が浮上しつつある。今以上に高い電気料金は払えないと悲鳴を上げる家庭需要家が出てきている。

 他方、家庭用の太陽光発電設備を設置できるのは、それなりに裕福な一軒家だけで、それ以外の人々、特に低所得者には太陽光パネルを買える財力はない。これは不公平なことなので解決しなければならないが、ドイツでは「まだ根本的な解決策を見出していない」。

 再エネ賦課金は00~14年の累計で1000億ユーロ(約13兆円)を超えた。これに関して、「例えば技術革新に投入していたらどんなに良かっただろうか、などと考えてしまう」。ドイツでも、こうした見方があることに安心する。

 高止まった電気料金に対しては、産業需要家からも批判がある。産業需要家の再エネ賦課金を免除する仕組みはあるが、近隣諸国との産業競争上、非常に不利で、ドイツでは産業空洞化の問題も起こっている。ドイツの電気料金はEUでも高い水準にあり、産業政策上の大きな課題となっている。

 家庭需要家、産業需要家いずれのコスト負担増への対策についても、「まだ見出されていない」のが実情だ。

ドイツ1国だけでは分からない
隣国フランスやEU全体を見よ

 隣国フランスは原子力推進で、ドイツは脱原子力。この違いは何かと尋ねたら、(1)86年のチェルノブイリ事故後、ドイツには放射能の雨が降ったが、フランスは違った、(2)福島事故前後で、フランスは原子力推進を維持、ドイツは政治勢力図の変化で脱原子力を決定、(3)フランスは国営原子力だが、ドイツは民営原子力なので他電源との競争関係で存廃が決まる、との答え。

 日本は、FITを「輸入」したように、ドイツの解なき“方程式”を「輸入」するのだろうか? FITの教訓から考えても、答えは自明だ。

 最後に、印象的なコメントを幾つか ─ 「ドイツが原子力ゼロ化を外国に対して勧めることは難しい。外国に対してそれほど影響力を持っていない」、「原子力はCO2排出量削減に関して有効。フランス、ベルギー、スイスなどドイツ周辺諸国は今後とも原子力推進。ドイツは再エネ推進とエネルギー消費量削減でCO2排出量削減を進める」、「エネルギー政策は、それぞれの国が、それぞれの事情を勘案しながら進めていくべき」……。

 要するに、“再エネ大国ドイツ”1国だけを見つめるのではなく、隣の“原子力大国フランス”や、送電網が繋がっているEU全体を見つめるべきとの示唆だ。日本が学ぶべきは、そういう広い視野に立つことである。

  
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◆Wedge2015年5月号より

 

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