政府が検討中のエネルギーミックスに於いて、「原子力比率」や「再エネ比率」の議論の前提となる「省エネ比率」は40%に上り、過大に試算されている。このままでは、再エネを上回る国民負担が新たに発生しかねない。「省エネ比率」を今一度精査し、大幅に見直すべきだ。
政府長期エネルギー需給見通し小委員会(以下、小委)は、3月10日の第四回会合で、2030年の再エネ導入量についての試算を示した。報道によれば、再エネ比率(=電力需要に対する再エネの比率)は21%程度になるとされた。今後、この再エネ比率と、そして原子力比率について、いわゆるエネルギーミックスの検討が本格化する。
だが、この検討の前提となる電力需要の見通しが、過大な省エネを見込んでおり、それが大きな国民負担に帰結するであろうことは、あまり知られていない。
小委では、2月23日の第三回会合で、省エネ対策後の試算として2030年に9360億kWhという電力需要を示している。これは2012年の9670億kWhから、年率△0.2%の減少である。
これは経済成長率を1.7%とするという小委の前提と全く相容れない。なぜなら、電力需要の伸び率は、経済成長率を上回るのが普通だからだ。これはエネルギー経済学の常識でもある。RITE(地球環境産業技術研究機構)・秋元圭吾氏も指摘しているように(リンク先のスライド14参照)日本でも、電力需要の経済成長に対する弾性値は、1990年~2000年の10年間は1.1、2000年~2010年では1.0だった。
小委は、今後、省エネを推進することで、電力需要を年率△0.2%で減らすことが出来るとしている。だがこの想定は安易に過ぎる。なぜなら、過去にも省エネは推進されたが、それにも関わらず、電力需要の伸び率は経済成長率を上回ってきたからだ。
例えば、いまLEDが脚光を浴びている。確かにLEDはよい技術であり、普及を図るべきである。だが、だからといって国全体の電力需要が減ると見るのは早計である。過去にも、エアコンやテレビなどの効率は急激に向上したが、それにも拘わらず、電力需要の伸び率は経済成長率を上回ってきた、というのが実態であった。効率は向上しても、大型化したり、普及台数が増えたり、使用頻度が増えたり、あるいは通信用のサーバーなど、全く新しい機器が登場してきたからだ。
ここ数年でこそ、リーマンショックや大震災後の節電があり、電力需要は停滞気味に推移した。だがそれらが全て終わった2012年を起点として、かつ今後は経済成長をすると想定する以上、徹底した省エネ努力をしたとしても、その結果として、電力需要の経済成長に対する弾性値は1に近くなるはずである(詳しくはこちら)。