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2015年4月27日

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石川和男 (いしかわ・かずお)

政策アナリスト

1965年生まれ。89年東京大学工学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。電力・ガス自由化や再生可能エネルギー開発振興、環境アセスメントなどに従事。2007年に退官後、内閣官房企画官、内閣府規制改革会議専門委員などを歴任。現在、社会保障経済研究所代表。著書に『原発の正しい「やめさせ方」』(PHP新書)など多数。

日本のエネルギー政策は本当に「ドイツを見習う」べきなのだろうか。“Energiewende”と呼ばれるエネルギー改革を進めるドイツの実情を探った。

 ドイツは“2022年の原子力ゼロ化”や“50年の再生可能エネルギー発電比率80%”、“50年のCO2排出量削減率80%(対1990年比)”など意欲的な目標を掲げる。これは“Energiewende”(エネルギーヴェンデ)と呼ばれるドイツのエネルギー改革の一環だ。

2022年の原子力ゼロ化をめざすメルケル政権(BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 ドイツがこの目標を実現させるには、非常にしんどい道が待っているだろう。簡単に達成できそうならば、誰も注目しない。安い原子力をやめ、高い再エネを更に拡大し、エネルギー消費を相当減らすことになる。それでいて、国民生活水準も経済成長も維持させる。世界は、ドイツのこの難解な“方程式”への挑戦を注視している。

 エネルギーヴェンデに対するドイツの熱意と決意は固く、日本では「ドイツやスペインでも国民の負担増などへの批判はあるものの、再生エネの比率を高めることを選択し、実現したのだ」(14年11月7日付、毎日新聞)のように、ドイツを持ちあげ、日本も見習えとする報道が目立つ。

 しかし、ドイツの道は決して平らではなく、国民負担はどの程度か、経済成長はどうなるのか、など聞きたくなることは山ほどある。日本の記者がその務めを果たしてくれないなら、とにかく、現地に行って現地の人々に直接聞いてみよう。そう思って3月にドイツを訪れた。

 率直な感想は、彼らは、自分たちの目標を実現させるためには、どんな苦労も負担も厭わないのではないかということだ。

 だから、『ドイツがやるのだから日本もやれ!』と、ドイツを取材した日本のマスコミにそういう論調が目立つのは当然とも思う。彼らが会見で語ることや配る資料に書いてあることを、何の疑問も持たずにそのまま報じれば、ドイツは再エネ拡大・原子力ゼロ化に突き進む素晴らしい国だ!となってしまう。


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