週末の衆院選を控え、政見放送では各党の大略が次々と示された。しかし気になるのは、その政策をどのような手順で実現していくのかという、具体の部分である。
ビジネスにおいても同じことが言える。事の本筋(原則)を押さえることはもちろんである。しかし『葉隠』では、本筋を実現するための手順、つまり枝葉(細則)を押さえることはもっと大切であると説く。
常朝の説くその真意とは、いったいどのようなものだろうか?
枝葉末節こそ大切
枝葉末節ということは、あまり大事ではない些細なことがらのことをいう。しかし、ほんとうに小さなことは大事でないのか、よく考えてみる必要がある。会議などで、大言壮語ばかりしていて、手順を話し合われないような場合が多い。手順ぬきの議論というものは、何もやらないというのと同じことなのである。
本筋をさへ立てはづさぬ様にすれば、枝葉の内には、飛手をも、案外の事をもして苦しからざるなり。枝葉の事に結句大事はあるなり。少しの事にふりのよしあしあるなり。
(現代語訳)
本筋さえたてて、それをはずさないようにしていれば、枝葉のことは順序が狂っても、異常なことをしても差しつかえない。しかし、ほんとうは枝葉のことこそが大事なのである。少しのことでやり方のよし悪しは決まるのである。
本筋というものは、現代流にいえば原則である。これは一定の方向を定めるために大切であることには違いない。しかし、大切であるがために、あまりにもそこへ目がそそがれて、細則にあたる枝葉が忘れ去られてしまうことが多い。常朝はその陥りやすい誤りを知っていたからこそ、このような指摘をしたのである。