2024年7月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月10日

 中国が国際法規に一層大きな役割を果たさせるというのであれば、国際法を単なるガイドラインや外交政策の一手段以上のものとして認めねばならない、と論じています。

出典:Patrick M. Renz & Frauke Heidemann,‘China's Coming 'Lawfare' and the South China Sea’(Diplomat, May 8, 2015)
http://thediplomat.com/2015/05/chinas-coming-lawfare-and-the-south-china-sea/

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 中国は、今や多くの条約を締結し、また、主要な国際機関に加盟することにより、国際法規の理解や実践を深めており、国際法規の専門家も増え、国全体として持つ国際法規に関する専門知識も大いに増大していると推測されます。

 開放前の時代には、中国は極めて特異な、硬直した国際法理論を取っていたと思われるので、中国が今日の国際法につき理解を深め、外交の中で国際法を使っていこうとすること自体は、一般論としては結構なことです。

 しかし、それが実際に結構なことになるのかどうかは、次のような点につき、中国の今後の行動を見ていく必要があります。

 第一に、硬直化した主権重視です。1990年代半ば、APECで具体的協力活動を進める際に中国はしばしば主権を持ち出して抵抗しました。今の国際社会でも、もとより主権は重要であり、これを軽視する国はありませんが、同時にそれを踏まえて、紛争や問題を解決し協力を進めようとしています。中国が国際協調の精神をもって国際法を使おうとしているかどうか、それを端的に示すのが紛争の司法的解決ですが、この点極めて消極的です。

 第二に、国際法の政治目的での利用です。中国は、国際法の適用に当たって極めてプラグマティックなアプローチをとっていると言われます。中国は二国間交渉による解決を好みます。最終的には、政治が優越するというのであれば、法の尊重にはなりません。

 最近の中国による国際法重視の姿勢の背景には、外交全般において「法の支配」が強調されていることと関係があるかもしれません。つまり、西側の「法の支配」論へ対処するために勉強を強化しようとしている可能性があります。仮にそうであれば、今日の国際社会の基盤をなす国際法を理解し順守しようとするよりも、西側の議論に反論するための理論武装をしようとしていることになります。

 中国南海研究院院長が示唆するように、今の国際法は西側資本主義国の作ったものだとか、途上国の意見が入っていないものだとか、そのため一部の法規は変えていかねばならないといった議論に向かうのであれば、中国の現状に対する挑戦が、地政学、経済の分野などに加え、国際法規の分野にまで拡大することを意味することになります。それが中国の目指していることであると見て間違いはないでしょう。

  
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