2014年12月6-12日号の英エコノミスト誌は、中国の習近平国家主席の「外交講話」は、中国は強国になったが、世界とは良好な関係を築けると言って周辺諸国を安心させる狙いがあったが、それに成功したとは言えない、と報じています。
すなわち、2014年11月末、中国共産党は、2006年以来となる外交に関する重要会議(中央外事工作会議)を開催し、政治局員や軍・政府幹部が出席する中、習国家主席が「重要講話」を行った。そのメッセージは、(1)今や中国は大国であり、大国にふさわしい外交政策及び国際的な尊敬が必要だ、(2)国際秩序も地域秩序も流動していて、世界は多極化に向かいつつある、(3)この重要な過程は、中国と世界の双方がウィン=ウィンになるよう何とか平和的に処理していける、というものだった。
第3のメッセージは、中国の挑発的行動は友好国をも警戒させて、中国の国益を損なったのみならず、国際的紛争を引き起こす可能性もあることに中国が気付いた、と希望的に解釈することもできる。実際、習はAPEC会議でこれまで会うのを拒んでいたアキノ比大統領や安倍総理と握手した。
また、豪州や韓国とは、二国間自由貿易協定を結び、米国とも、気候変動や米中両軍間の信頼醸成措置等、多数の事項について合意した。
しかし、中身まで変わったわけではない。米中はあまりにも多岐に利害が絡み合っているため、ある面では協力せざるを得ないが、だからと言って緊張や競争の原因が除去されるわけではない。オバマは、将来アジアの安保体制は、「相互安全保障同盟・国際法や国際規範の遵守・紛争の平和的解決」に基づくものになるか、あるいは、「勢力圏・強制・大国による小国の威嚇」に基づくものになる可能性があると述べたが、各体制の主導国としてどの国を念頭に置いているのかは明らかだ。
北京での演説で、習は、「国際的緊張と紛争の深刻性」や「国際秩序を巡る競争の長期化」に言及しており、中国が威嚇する可能性があることが窺える。また、習は周辺諸国との紛争で譲歩するとは言っていない。中国は係争中の南シナ海の岩礁で建設工事を止めていないし、尖閣諸島にも巡視艇を送り続けている。