一方のベルモフタールは14日未明、リビア人の過激派とともにリビア東部に潜伏していたところをF15戦闘爆撃機により爆撃された。リビア暫定政府が死亡したと発表しているのに対して、米国はベルモフタールが標的だったことは認めたが、最終確認はまだだと慎重な姿勢を示している。ベルモフタールは“不死身の王子”と言われるほど、何度も死亡説がありながら生き長らえてきた過去がある。
ベルモフタールは北アフリカのアルカイダ分派である「マグレブ諸国のアルカイダ」の大幹部だったが、組織を離脱して別の組織を作った。「アフリカのビンラディン」と自称するほど、ビンラディンに心酔し、親しい仲間がイスラム国に合流する中で、あくまでもアルカイダへの忠誠を貫いていた。
日本人10人が犠牲になったアルジェリアのテロ事件では、襲撃そのものには自分は参加せず、日本人や英国人ら5人をリビアに連れてくるように指示。身代金を取るのが事件の狙いだったことが明らかになっている。
イスラム国の背後で
静かに勢力を拡大するアルカイダ
アルカイダはイスラム国が世界の注目を集めているのをよそに、静かに勢力を拡大させてきた。特にイエメンのAQAPとシリアの「ヌスラ戦線」の2つの組織は地元のスンニ派武装組織と連携し、米国の攻撃を回避すべく、目立たないように活動してきた。
ヌスラ戦線はシリア内戦の反政府連合「遠征軍」に加わり、シリア北部での最近の政府軍撃退に大きな力を発揮した。この地元組織との連携作戦は、アルカイダ本家からの指令に基づいており、当面は西側へのテロ攻撃を控えることも含まれているという。
米国はこうしたアルカイダを、過激派の中心的な存在になったイスラム国よりも危険視している。国づくりに忙しいイスラム国よりも、アルカイダの方が国際テロを画策していると見ているからだ。昨年、米国がシリア領内のイスラム国空爆に踏み切った際、アルカイダの秘密組織ホラサンを重点的に攻撃したのもそうした理由からだ。
しかし、今回の大物2人の暗殺でアルカイダが大きな打撃を受けると見る向きは少ない。AQAPはすでに後継者を発表しており、「オバマの暗殺作戦」は今後も切れ目なく続くだろう。
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