イスラム過激派の暗殺作戦に傾斜していたオバマ米政権は先週、国際テロ組織アルカイダの指導者2人を相次いで空爆で殺害した。2011年に同組織の指導者だったオサマ・ビンラディンが米特殊部隊に殺害されて以来の「最大の成果」(米紙)で、過激派組織「イスラム国」の幹部らが暗殺を恐れてますます地下に潜るとの見方も強い。
ビンラディン信奉者であり
日揮社員殺害事件の主犯
殺害された2人はいずれもビンラディンの信奉者だ。1人はイエメンのアルカイダ分派「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)の指導者、ナセル・ウハイシ。もう1人は2013年にアルジェリアで、プラント建設大手「日揮」の社員ら日本人10人を含む外国人40人を殺害したテロ事件の主犯、モフタール・ベルモフタールだ。
AQAPはパキスタンとアフガニスタンの国境地帯に隠れ潜むアルカイダ本家に代わって、テロ活動を主導してきたアルカイダの最強組織。指導者のウハイシはビンラディンの後を継いだ本家の指導者ザワヒリの後継者として、アルカイダのナンバー2の立場にあった大物だ。長らくビンラディンの秘書官を務めた経歴もある。
AQAPはこれまで執拗に対米テロを画策。2009年のクリスマス・イブにデトロイト上空で旅客機を爆破しようとしたが、自爆犯のナイジェリア人の爆弾の作動がうまくいかずに失敗。また米国向けの貨物機のパソコンに爆弾を仕掛けたが、サウジアラビアの情報機関に察知されて未遂に終わっている。今年1月7日には、パリの風刺新聞社シャルリエブドの襲撃事件を起こした。
今回ウハイシが殺害されたのは9日か12日。AQAPが同国の内戦に乗じて占領したイエメン南部の同国5番目の都市ムカラの潜伏先を無人機で空爆された。同組織は声明で死亡を確認、米国への報復を誓っている。米国のイエメンでの無人機作戦は国防総省がアフリカのジプチから、中央情報局(CIA)がサウジアラビアの秘密基地からそれぞれ飛ばしており、いずれかの無人機が攻撃した。