EPAは14年6月に既設火力からの排出に関する規制の暫定CPP案を発表し、州毎の目標値と全米ベースで、発電所からの排出量を05年比30年までに30%削減する目標を打ち出した。具体的な対策は地元の発電の事情をよく知る各州に委ねる案だ。
EPAに寄せられた200万通を超えるパブリックコメント等を考慮し、EPAは8月3日に既存火力の規制に関する最終CPP案を発表した。30年までの削減率を32%に引き上げるが、具体案を各州政府に委ねることは変わらず、州間の排出量取引も導入することになった。EPAは、既存火力からの排出量を削減するために、3つの分野を挙げている。
① 石炭火力の効率改善
② 石炭から天然ガスへの燃料切り替え
③ 再生可能エネルギーの導入増加
州政府が削減案を作成しない場合には、連邦政府が代わって作成することになっている。火力発電所からの排出削減率が大きくなったが、米国がUNFCCC事務局に提出した図-2の全体の目標は変更されていない。
オバマの石炭への戦争の行方
今回発表されたCPP案が実行されるかどうか、まだ不透明だ。まず、EPAの権限に関する訴訟が多く起こされるだろう。EPAが大気浄化法の下発電所からの有害物質を規制する権限を有することは07年に最高裁で認められたが、再エネ導入までを大気浄化法の下でEPAが指示することには無理がありそうだ。この点は論争になる。州政府がEPAの指示に従わず削減案を作成しない場合に、連邦政府が州政府に代わり案を作成する権限があるのかも論争になりそうだ。
最も大きな問題は、次の大統領に誰が就任するかだろう。民主党で最有力とされるヒラリー・クリントン上院議員は、CPP支持を明確に打ち出している。オバマは再エネの発電量目標値を30年時点で20%としているが、クリントンは33%とし、20年までに5億枚の太陽光パネルを設置する目標も選挙戦のキャンペーンの中で出すほど、再エネにも熱心だ。クリントンが積極的な背景には、米国有権者の3分の2が気候変動問題に取り組む大統領候補に投票するとの世論調査があると言われている。