一方、共和党の候補者はCPPには反対の立場だ。ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は「州政府を無視している。無数の人が職を失い、皆のエネルギー価格が上昇する」と言い、テッド・クルーズ上院議員は次のようにコメントしている「国のエネルギーシステムを不安定化する大統領の試みは間違いなく憲法違反であり、議会、裁判所、あるいは次の政府が無効にしない限り、電気料金を高騰させることになる」。
実はシェール革命が支える
米国の気候変動、温暖化政策
今年になり、米国では既に10社近くの石炭会社が倒産しており、5000名以上が職を失ったと言われている。CPPが実行される前に、石炭会社の倒産が続くのは、米国の電力業界で石炭火力から天然ガス火力へのシフトが止まらないからだ。
このシフトは温暖化対策とは関係なく、経済性の問題によるものだ。電力会社向けの石炭と天然ガスの価格推移は図-3の通りだ。石炭は取り扱いに手間と費用が掛かること、燃焼灰の処理などの公害対策費用が必要なことから、天然ガスとの比較では相当安くないと競争が難しい。産炭地以外の電力会社の多くでは天然ガスのほうが価格競争力を持つことになる。
ポーターも論文のなかで、石炭から天然ガスへのシフトが続き、22年までに既存石炭火力の最大半分が天然ガスに切り替わり、30年には発電量の43%が天然ガスになるとしている。これにより暫定CPPの目標30%は達成されるが、電気料金の上昇は4%に過ぎないとしている。
ポーターは、また再エネ導入にも、競争力のある天然ガスが大きな役割を果たすとしている。ドイツでは最エネの導入により電気料金の大きな上昇があったことを失敗例としてあげ、不安定な再エネ導入にはバックアップの天然ガス火力の活用が欠かせないとしている。天然ガス火力の発電コストが安い米国であれば、再エネと天然ガス火力の組み合わせにより送電線にも大きな負担を掛けることなく、再エネ導入を当面進められるとの意見だ。
米国は価格競争力があるシェールガスを活用し、温暖化問題、再エネ導入を大きなコストを掛けることなく達成可能とのポーターの意見は正しいのだろう。燃料を輸入に頼り、選択肢が限られている日本が、大きな電気料金の上昇を避けながらどう温暖化対策を進められるのだろうか。さらに、エネルギー安全保障とコストも考える必要がある。英国民の過半数は、エネルギー安全保障と温暖化対策の観点から原子力の新設が必要と考えているとの調査結果があるが、日本では、その数字は20%程度だ。私たちにとって重要な課題は何だろうか。それを日本はどのようにして達成できるのだろうか。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。