2024年4月26日(金)

メディアから読むロシア

2015年8月21日

チャイナ・シンドローム

 結局、ロシアは交渉の最終段階において不毛な立ち回りを諦めた。付言しておくと、これはモスクワが実際的な見返りを得ようとしてのことであった。

 しかし、そんな見返りがどこから来るというのであろうか。モスクワは、イラン核合意において自分たちが敗北したことは理解しているが、主要な勝者が中国である以上、何もしようがないのである。北京はイランの石油ガス計画に多大の投資を行う用意があり、その価格が下落するならば、エネルギーに依存した中国経済には願ってもないことである。

 中国が合意締結を望んだことが、ロシアがウィーン交渉を妨害したいという欲望を抑制したことのおそらく主要な理由である。西側から孤立する中で、ロシアは資金供与と市場に関する中国の後ろ盾に実質的に依存するようになっている。このことを自覚しているからこそ、北京はますます選択肢の少なくなっているロシアとの交渉において強硬な立場に出ているのだ。イランに関するロシアの協力的な振る舞いに対して、見返りとして気前よく借款や投資が与えられる見込みは少ない。ロシアが外交的に弱体化する中で、オバマとケリーはロシアに対して見返りを与える心配をしなくてもよくなっているのである。

 (翻訳終わり)

「変化する「橋頭堡」としてのイラン」

 以前からロシア内外の識者達が指摘してきたように、イランはシリア問題をはじめとする中東政治において、ロシアの対外戦略の橋頭堡であり、イランが主力産品である原油の禁輸を受けて苦しむ中でもロシアは陰に日にイランを支援してきた。また、イランは南カフカスにおけるロシアの重要同盟国であるアルメニアの通商やエネルギー供給を支え、在アルメニア・ロシア軍への兵站を維持する上でも欠かせない存在である。

 その一方、厖大なエネルギー資源と7800万人もの人口を有するイランは巨大な潜在力を有している。そのイランが国際社会への復帰を果たした暁には、もはやロシアに依存しない強力な地域大国となることをロシアは恐れてきた。

 また、イラン核合意の成立がエネルギー価格の下落を招くであろうとの予測はバーエフに限らず広く言われてきたことであり、これは落ち着きかけていた原油価格とルーブルが、イラン核合意後、一気に下落したことからも裏付けられる。


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