エコノミスト誌6月20-26日号は、これまで中国と中東の関係は石油と貿易が中心だったが、経済関係の強化につれ、政治的関わりも否応なく拡大するだろう、とする記事を掲載しています。
すなわち、中国と中東間の貿易は2014年までの10年間に6倍以上に拡大した。石油を渇望する中国は、バーレーン、エジプト、イラン、サウジの最大の輸入相手国であり、イラン、オマーン、サウジの最大の輸出相手国だ。一方、中東は安価な中国の工業製品の絶好の市場であり、中東には中国製品が溢れている。2013年には、習近平が中国と中東を結ぶシルクロードの復活を提唱した。
中国が西にアラブ諸国が東に目を向けている背景には、シェールオイル・シェールガスによるエネルギー市場の大変動がある。かつて中東石油を大量に輸入していた米国は、シェールオイル・シェールガスのおかげでエネルギー自給率が高まり、20年後には中東石油の90%はアジアに行くと予測されている。また、アラブ諸国はインフラ整備のために中国からの投資も欲している。
この純粋に経済的な関係は上手く行っているが、やがて変わる可能性がある。中東の多くの指導者は米国の「撤退」を憂慮、一部には中国による穴埋めへの期待がある。特にエジプトのシシのような独裁的指導者は、政治的多元主義抜きの経済開発という中国モデルを高く評価し、中国が人権問題で煩いことを言わないことも快く思っている。
確かに、他国の国内問題への「不干渉」を標榜する中国は、米国のイラク侵攻に反対し、アサド政権打倒の決議にも反対票を投じる一方、対立するイスラエルとパレスチナ、イランとサウジの双方と友好関係を保とうとしている。ISと戦う有志国連合にも加わっていない。世界中を飛び回っている習近平と李克強が中東には行っていないことも注目される。習は4月にサウジに行く予定だったが、イエメン戦争についての論評を避けるためか、訪問を延期した。
しかし、中国は中東で積極的役割を果たし始めており、超然たる立場を保つのは難しくなりつつある。例えば、アサド打倒決議を拒否したことで、中国はアサド支持派と見なされている。イランとは核協議の相手国となる一方、昨年は合同海軍演習を行い、シリアでは反政府派とも接触、アデン湾ではソマリアの海賊から商船を守っている。
経済的利害の拡大につれ、中国も否応なく魑魅魍魎の中東政治に巻き込まれていく可能性がある。昨年、オバマは、中国は中東からの石油の安定供給体制に「ただ乗り」し、ISとの戦いも避けている、と批判したが、一部のアラブの指導者も同じ思いを抱いている、と解説しています。