2024年7月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月28日

出典:‘The great well of China’(Economist, June 20-26, 2015)
http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21654655-oil-bringing-china-and-arab-world-closer-economically-politics-will

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 中国は経済面で石油輸入、工業製品輸出、インフラ整備支援などで、中東との関係を強めていることはこの論説の指摘する通りであり、有益な注意喚起です。

 この論説は、この経済的存在感の増大は中国の中東での政治的役割の増大に繋がるのではないかとしていますが、いくつかの疑問があります。

 第1に、中国は中東諸国間の対立に巻き込まれる可能性があるといいますが、中国は極力それを避けようとするでしょう。中東でのサウジとイランの対立は大きいですが、習近平が4月のサウジ訪問を取りやめたのは、この両国の対立点であるイエメン情勢に巻き込まれないようにとの配慮からではないかとの、論説の指摘は多分当たっているでしょう。イスラエル・パレスチナについても、中国はパレスチナ国家を承認していますが、イスラエルにも結構気を使っています。「イスラム国」と戦う有志連合にも加わっていません。とにかく対立には中立的に、という気持ちが強いからでしょう。

 第2に、サウジやイランは共産主義嫌いであり、中国に中東で政治的な役割を果たしてほしいとは望んでいません。彼らは、基本的に中国は無神論者で、信用ならないと思っています。キリスト教国とイスラム教国とは厳しく対立していますが、同じ「啓典の民」としての近さがあります。

 第3に、中国の石油輸入についてオバマが「ただ乗り」と言ったのは、輸送の安全確保に米が努力しているのに、中国が何もしていないことを批判したのであって、中国に中東で政治的役割を果たすことを望んでいるわけではないでしょう。中国が中東で政治的役割を果たすことを欧米は望まないと思われます。

 第4に、石油市場については、買い手優位か売り手優位かが議論されますが、シェールガス・シェールオイルが大きな要因になり、ここしばらくは買い手優位の市場が見込まれます。中東からの石油輸入を確保するために中国が姿勢を変える必要は、近い将来にはないのではないでしょうか。

 そういうわけで、中国が中東で大きな政治的役割を果たす時代は、まだ先のことではないかと思われます。ただし、日中間で、たとえばアザデガン油田をめぐり、あるいはロシアの石油をめぐり起こりうる資源獲得競争では、日本の立場は中国の立場に比較し、弱くなる傾向は否めないと思われます。

  
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