木下 おっしゃるとおりです。1990年代後半に基礎税収が頭打ちになった自治体は山ほどあるのに、みんな借金で食いつなぎつつ、短期的には交付金などで埋め合わせてきた。長期でどれだけお金が足りていないのかが見えていないんです。
久松 多くの人にとってリアルなのは、目先のキャッシュなんですよね。
木下 地域が活性化しない理由もそこですよね。今年もらえる300万円で、将来の5億円を失うなんてことが普通に起こる。予算がついたからといって全然利用されない施設を作って、維持費ばかり毎年かかるというのはその典型で、長期で積算していくと建設時にもらった国費なんてむしろ微々たるものになっている。そんなことがザラにあるんです。
自分のところで売れないものはどこに出しても売れない
久松 農業だと「集落営農組織」というのがあって、小さい農家を集落単位でひとつの法人などにして、生産工程の一部を共同化すると補助金がついたりするんですよね。農機を共有するとか、スケールは小さいんだけど、集落のコメ農家全員が役員になってかろうじて維持しているといったところがけっこうある。そういうところから「専従者の若者を育てたいから、野菜作りを教えて欲しい」と依頼が来たりするんです。「片手間でやるから教えてくれ」とか、本当にそういう言い方をされるんですよ。
でもね、実際に行ってみると稲作がかなりの面積を占めていて、それでこの売上しか上がっていないんだったら、そこをまずなんとかしないといけないんじゃないかという話ばかりなんですよ。
木下 本業側に問題があるってことですよね。
久松 そうなんです。他の作物に手を出したり、補助金で加工設備を入れる前に、本業の米を直販するとか、業者に営業するとかでもっと利益を出せるんじゃないか。でもそういう地道でめんどうなことにはまったく手をつけてないんですよね。
地道な改善は目立たないけど、お金もかからずにちょっとしたことで変えられる。やる気のある人たちと、その部分をやっていこうと思っているんですよ。いまは食品工場も、極小ロットの加工を引き受けてくれるところがいくらでもある。だから自社で設備する必要なんかまったくないし、どれだけ加工で努力しても専業のプロよりも良いものができるはずがないんですよね。
木下 しかも売れるようになったときには、すぐに量産もしてくれるわけですもんね。