商店街の再生や、公民連携による「稼ぐ公共施設」づくりなどを手がける木下斉氏と、ITを駆使して自ら「小さくて強い農業」を営みつつ、さらにほかの農家への支援事業を構築中の久松達央氏。注目を集める二人の初顔合わせが実現した。
右肩上がりの時代はとうに過去のものとなり、縮小と衰退ばかりが視界を埋め尽くす現在にあって、それでもしたたかに「小さく強く稼ぐ」ために必要な思考と行動とはどのようなものか。また、再評価されるべき過去の知見とは――。
「どこでも誰とでもうまくいく方法」は存在しない
久松 木下さんは商店街や不動産オーナーからオファーを受けることが多いと思うのですが、行ってみると何を語ってもまったく響かない人ばかりでうまくいかない、なんてこともあるんですか?
木下 山ほどあります。100あるうちの98までは響かない、いや99かな(笑)。 ま、それが実感です。
久松 自分というフィルターを信じて組める相手を見極めて、組む、と。
木下 そうですね。私が今、代表を務めている団体の一つに、「エリア・イノベーション・アライアンス(AIA)」があります。全国15都市の地域で、それぞれに事業を通じた地域の活性化に携わる会社などが加盟しているのですが、結局、活性化の基本となるのは事業を仕掛けるプレイヤー、人なんです。だからある地域で成功事例ができたからといって、それをそのまま広げていくという発想ではやっていません。ある人にはできるけど、その通りのやり方は他の人にはできない。だから地域ごとに得たノウハウを、ある程度まで体系的に整理しプロセスを修正しながら、地理的に離れた別のエリアで活かしていく。まさに七転八倒しながら、参加している地域が互いに学んでいくんです。
私たちの地域活性化の考え方は、地域に入ってくるお金を多くして、地域から出て行くお金を小さくする、いわばエリアでの貿易黒字を大きくすることに主眼を置いています。そのために、多種多様な事業者と連携することを重視します。しかし、このような経営的な視点に響いて反応してくれる人の数が、まだまだ地域ごとに限られているというのが実態です。
久松 僕もいまIT企業の人と組んで、小さな農家の受発注業務や会計業務などを支援する事業を作ろうとしているんだけど、クラウド型の連携だから、近所だろうが離れていようが関係ないんですよね。むしろ、土浦市内や茨城県内から仕事や講演の依頼がほとんど来ない(笑)。
木下 僕の回りで面白い事業をやっている人もみんなそうですよね。講演とかも一回は呼ばれるけど、次から呼ばれない。ほとんど危険思想の持ち主扱い(笑)。何より地元では必ずしも歓迎されていなかったりしますからね。