木下 僕らが関わる事業は基本的に、1年を3~4期に分けてカタチになるかどうか見定めます。でも「3ヶ月後までにこれをやってください」と無理強いしてやるのではなく、互いに「ここまでやろう」と決めたことが3ヶ月間まったく動かないとすれば、それはしかるべきタイミングではないんだと割りきって、いったん中止したりもします。無理やりやっても、いいことはないですからね。
久松 なるほどね。それは大事なことですね。僕がお世話になっている飲食プロデューサーの方は、関わった事業の成功率が高いんだけど、その理由を聞くと「だって成功率の高い奴としかやらないもん」といたってシンプル。こっちからお願いしてやることではないし、マッチングもあるから別の人がハマる場合だってある。その割り切りがいわゆる「名ばかりコンサルタント」との違いですよね。どんなケースでもうまくいく方法なんて、あるわけがない。
木下 そう思います。方法は刻一刻と変わっていきますからね。僕らはプロフィットシェア、実際に出た利益から決められた割合でギャランティを得るという契約で事業開発を共にやっているので、あくまでも成果ありきなんです。アイデアだけとか、プロセスの美しさで評価されないことが、すごく大切なんですよね。互いに緊張感をもって、結果を出すことを約束したうえで進める。だから、どこでも通用する方法などないことも、強く実感してきました。プロセスの体系化はできますが、どこでも同じ方法が同じように進むことはない。しかるべきタイミングとしかるべきチームが揃って、かつ自分が果たせる役割があったときに、物事が動くんですよね。互いにリスクを負っているからこそ、緊張感も維持できますし。
久松 やっぱりリスクを取ることが大事ですよね。
「できること/組める人/かける時間」を絞りこむ
久松 さっきお話したITを使った農家支援のほかに、新潟県三条市と組んで人材育成をやろうとしているんです。三条市は隣の燕市とともに「燕三条」として金属加工で有名で、ものづくりの町としてはうまくいっている。だけど中山間地域は農業くらいしかめぼしい産業がなくて、中山間地域だから工場誘致もできない。日本創成会議のいう「2040年問題」、地域に誰もいなくなるかもしれないという悩みを抱えているんです。
僕の『小さくて強い農業をつくる』を読んでくれた三条市の國定勇人市長が、「こういう独立型の農業は活性化のコンテンツとして使えるんじゃないか」と声をかけてくれたんですけど、僕もまた「使えるはずだ」と思って受けたんですね。