2022年12月4日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月5日

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 そもそも冷戦後の対中国政策は包括的な戦略的プランニングあるいは大統領レベルの検討の結果であったためしはない。2016年に誰が大統領に選ばれようとも、現在のアプローチを評価し、これに替わり得る政策を検討せねばならない。そのモデルはアイゼンハワーが就任に際し政府内外の専門家を集めて対ソ連政策を検討せしめた1953Solarium Projectである。この歴史に倣えば、新しい大統領就任の最初の数ヶ月が徹底した戦略的見直しのための最良の機会である、と論じています。

出典:Aaron Friedberg,‘A U.S. ‘Solarium Project’ for China’(Wall Street Journal, August 26, 2015)
http://www.wsj.com/articles/a-u-s-solarium-project-for-china-1440609226

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 この論説には共感を覚えます。この論説にもその趣旨の言及がありますが、筆者は別の論文で「中国の最終的な目標はアジアにおいて米国を押しのけ圧倒的な大国としての伝統的な地位を回復することにあり、従ってこれは歴史的な側面を有する戦略的挑戦である」と書いています。筆者が提案するように新大統領の下で対中国政策の徹底的な見直しが行われることを期待します。しかしその間何もしないわけにはいきません。もはや悠長なことが許される事態ではありません。

 オバマ政権も、事態を重視しているが故に「リバランス」政策を打ち出し、軍事力の配備はアジアに手厚くシフトさせるとしていますが、中国の行動を抑止出来ていません。オバマ大統領は踏み込んで米国にしか出来ない行動をすべきでしょう。欠如していることは、米国が我慢できる限界を明確に示すことではないかと思います。サイバー攻撃はとっくに我慢の限界を超えている筈ですが、連邦人事管理局に対するサイバー攻撃に対してどう反応したのかはっきりしません。南シナ海についていえば、ラッセル国務次官補(東アジア担当)は議会証言でかなり踏み込んだことを言っています。例えば、「国際法においては海洋に対する権利は陸地の形状から導かれるものでなければならないが、『九段線』による中国の海洋に対する権利の主張は陸地の形状に基づくものでなく、従って国際法と相容れない」、「いくら砂を礁に積み上げたところで主権を作り出すわけではない」と述べています。フィリピンが始めた仲裁裁判に支持を表明し(中国は無視を決め込んでいる)、また関係国が南シナ海に関する「行動規範」の一環として埋め立ての停止と埋立地の利用目的(軍事目的を排除する趣旨であろう)について合意することが緊張緩和に資するであろうことも述べています。この種の発言をオバマ大統領自身が行うことが出来ない筈はありません。更には、中国の勝手な振る舞いは看過出来ないことを示す意味で人工島に近接する海域に艦船や航空機を派遣することも、今の段階であれば不測の事態を招くことなく可能でしょう。

 対中国政策が大統領選挙の争点に浮上する可能性はあるでしょう。もしも、明年1月の台湾の総統選挙に際して中国の動向により台湾海峡が緊張する事態になれば、対中国政策が重要な争点となること必定です。選挙戦の喧騒の中では熟慮の上での賢明な政策が生まれない危険はありますが、政策の包括的な見直しの機会にはなります。少なくとも、米国内の声高な論議に中国が注意を払わざるを得なくなることは間違いありません。

  
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