2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月13日

 米の対中関与政策は、より現実主義的な、より大々的でないものにすべきだ。意味のないスローガンなどシンボリズムやレトリックはやめるべきだ。時には具体的な協力ができ、世界経済問題については一定の協力があるだろうが、中国が責任ある大国になるように、また、新たな大国間協調体制に中国が加わるように説得するという考え方は、当面無駄なこととして捨てるべきだ。安定の維持と紛争の回避が関与政策の中心目的である。両国の指導者は両国の利益が必要とする時に会えばよい。来る国賓訪米は、時期が間違っているし、場所も間違っている、と厳しく批判しています。

出典:Daniel Blumenthal,‘Rolling Out the Red Carpet Won’t Make China Play Nice’(Foreign Policy, September 9, 2015)
http://foreignpolicy.com/2015/09/09/rollingouttheredcarpetwontmakechinaplaynice/

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 オバマの対中関与政策に対する共和党保守派からの激しい批判です。不安を覚えるような、やや激しい表現も散見されますが、後半の三つの優先政策(中国よりも同盟国・友邦国との関与を重視する、真のTPPを支持する、中国の人権問題を重視する)と最後のやや落ち着いた対中政策の在り方に関する諸点(対中関係は重要だがより現実主義的な、より大々的でないものにすべき、首脳会談は必要な時にすればよいなど)は、今の米国の保守派のムードを知る上で興味深いと言えるでしょう。

 無意味なシンボリズムはやめるべきだとの点は理解できます。習近平への国賓待遇付与は、おそらく中国がそれを要求しているからであり、米国としては安いコストだと思っているのかもしれないが、内容のない中国流のシンボリズムは意味がないように思います。

 対中警戒感は、今、米で高まっています。オバマ政権下の8年、中国と関与しても一向に変化がなく、反対にどんどん中国が影響力を増すことに対する強い反発と懸念が基になっているものと思われます。案外広く共有されている感情かもしれません。

 いずれにせよ次期政権は、どちらの党が勝利しても、対中政策はよりリアリズムを強調したものになる可能性が高いと思われます。共和党が勝てば尚更ですし、民主党のクリントンになっても、オバマの時代と比べれば対中外交はよりタフな外交になるでしょう。政権交代による微調整は必ずしも悪くありません。

  
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