2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月21日

 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のオ―スリン日本研究部長が、終戦70周年の安倍総理談話は、平和の破壊という日本の過ちを中国が犯すかも知れないと警告したものである、との論評を8月24日付ウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。

画像:Getty Images News

 すなわち、安倍総理は歴代総理のお詫びを継承するとともに、今日、日本は国際秩序を守ることにコミットしているが中国はこれを覆すことに余念がないとの明確な警告を発した。談話は、日本の過去の侵略を用いることによって北京の現在の行動様式に注意を喚起している。そうすることによって、歴史の一章を閉じ、新たな章を書き始めようとした。

 総理は「お詫び」と「侵略」の語を忠実に繰り返したが、日本は永遠に謝罪を続けるわけにはいかないことを明確にした。この言明を和らげるために、総理は日本が「過去の歴史に真正面から向き合わねばならない」ことを完全に認めた。しかし、歴史は談話のごく一部である。談話はその長さと視野において過去の総理談話を遥かに超えるものである。総理は日本の近代の歴史の道筋を振り返り、東京の帝国主義的台頭と北京が今日辿る途とを対比させている。

 総理は近代日本が欧州の植民地主義と帝国主義から生まれたことを指摘し、1930年代の日本の敵対的行動は恐慌の時代の孤立と経済の行詰りに起因することを述べている。この事実は日本の不幸な戦争への道と今日の中国の行動様式の重要な違いを示している。中国もまたますます高圧的で攻撃的になっているが、それは平和と国際協力の時代においてのことである。帝国主義的な西洋に対抗した日本帝国と異なり、中国は中国から物品を買うこと以上に何も望んではいない西洋を怖れている。

 実際、中国の台頭が談話の隠されたテーマである。それ故に、総理は世界の平和と繁栄に貢献する諸国家の陣営に日本をしっかりと組み込みたかったのである。総理は日本が「自由、民主主義、人権」といった自由主義的価値の守護者と見られることを希望したのである。総理は日本が「新しい国際秩序への挑戦者」となって災厄をもたらしたことを忘れないと誓うことによって中国を想起せしめた。談話は日本の過去から地域の将来へと議論を移動させようと試みている。


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