世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月21日

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 アジアのバランス・オブ・パワーは過去10年に変容した。中国は今後も地域の最も重要なプレイヤーであり続けるであろう。共通の心配は自信過剰の北京が国際法と慣習を損ねることを試みることにある。また国内問題から国内の目をそらすために北京が海外でより攻撃的になることもあり得る。過去の過ちに思いを巡らすべしとの安倍総理の呼び掛けに北京が留意して然るべき理由である。アジアも世界も疑惑と対決の道を転げ落ちるわけにはいかない、と論じています。

出典:Michael Auslin,‘Abe Sounds Warnings Over Asia’s Future’(Wall Street Journal, August 24, 2015)
http://www.wsj.com/articles/abe-sounds-warnings-over-asias-future-1440437099

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 オースリンは安倍総理の談話に好意的なのでしょうが、「談話の趣旨は中国に対する明確な警告だ」という論旨は、いささか深読みし過ぎ、解釈の飛躍、あるいは趣旨の取り違えだと思います。談話を素直に読めば、これは、自己の過去の過ちに思いを致し、自己を戒め、自己の進むべき道を誓ったものです。

 しかし、こういう論評が出ることに、何ら不都合はありません。ことによると、オースリンはわざと趣旨を取り違えてこういう論評を書いたのかも知れません。日本が国際秩序への挑戦者となった過去、そして自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去について談話が悔んでいることに、オースリンは注目したのでしょう。総理が「外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって打開しようとした事実を反省し、法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということが談話の最も重要なメッセージである」と記者会見で述べたことにも注目したはずです。論評は、ここに今の中国の行動を重ね合わせ、隠されたテーマを見出しているわけです。確かに、これらの文章に中国に対するメッセージを読み取ることは不可能ではありません。もし中国が談話を中国に対する警告だと読み解くのであれば、それはそれで悪い話ではありません。

 隠されたテーマをいうのであれば、談話が、過去の総理談話と異なり、日本の現代史を20世紀の世界という時代背景の中に位置づけていわば総括し、その上で戦後世代にも謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないといっていることの意味はこれで総理談話は終わりにしたいということこそ、該当するのだと思います。終戦後80年になってまた総理談話を出そうということにならないことを期待します。

  
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