最近、中国政府が公安部の工作員を使って在米中国人移住者を半ば強制的に帰国させている件について、8月16日付ニューヨーク・タイムズ紙は、本件は多くの機密を握ったまま米国に逃亡したとされる令完成の動向にも絡んでいる、との解説記事を掲載しています。
すなわち、米政府関係者によると、オバマ政権は、中国政府の工作員が著名な国外移住者らに対して、ただちに帰国するよう圧力をかけていることにつき、米国内での活動停止を要求するよう、中国政府に警告を発したとされている。中国は、国外移住者の一部を汚職の容疑で指名手配している。米国内で秘密裏に活動している中国公安部の工作員は、中国人逃亡者を追跡して本国に送還し、場合によっては不正利得を回収する「狐狩り作戦」を行っている。
「狐狩り作戦」は習主席の腐敗撲滅キャンペーンの中核要素であり、2014年以来、930人以上の被疑者が本国に送還されているという。作戦に関わっている工作員は、公的な許可なく、観光・商用ビザで入国している可能性が高く、逃亡犯を帰国させるのに家族への脅しを含む強引な手段を使っている。米当局は中国人移住者らとの会話や工作員自体を監視することで、その証拠を集めている。
また、工作員らは、2014年に米国に逃亡し、サクラメント郊外の豪邸に住んでいたとされる令完成(令計画・前弁公庁主任の実弟)の足取りを掴もうとしてきた。同氏が米国に政治亡命を求めるとすれば、中国にとり史上最大の打撃をもたらす亡命者となりうる、と報じています。
出典:Mark Mazzetti & Dan Levin ,‘Obama Administration Warns Beijing About Covert Agents Operating in U.S.’(New York Times, August 16, 2015)
http://www.nytimes.com/2015/08/17/us/politics/obama-administration-warns-beijing-about-agents-operating-in-us.html
また、ワシントン・ポスト紙は、8月21日付社説にて、「強制帰国」の問題について米国が自由な国として何をなすべきか、問題提起しています。
すなわち、中国政府の手が伸びているのは汚職問題に限ったことではない。中国は、国境を越えて抑圧と人権侵害をしており、パスポートやビザの無効化、国外から中国を批判した中国人或いはその家族を投獄するなどの脅しをかけている。