オバマ大統領ら米政府首脳はキモを冷やしたに違いない。同時にアフガニスタンで内戦が激化する懸念に暗澹とした気持ちになっただろう。北部の同国 第5の都市、クンドウズが9月末、反政府勢力タリバンに一時的に制圧された時のことだ。しかも過激派「イスラム国」(IS)も勢力を拡大、アフガンが“第2のシリア”になるという悪夢のシナリオが見え始めた。
決断迫られるオバマ
アフガニスタンの治安は現在、約1万人の米軍が駐留することによってギリギリ維持されているにすぎない。2001年の9・11の報復として米軍がアフガニスタンに侵攻し、イスラム 原理主義政権タリバンを倒した後、同国の治安は北大西洋条約機構(NATO)軍主導の国際部隊が担ってきた。
しかし、国際部隊は 2014年に撤退、残留した1万人の米軍がアフガニスタン国軍の訓練とテロリスト掃討を続け、それらの米軍も2016年末には米大使館の防衛のため1000人の部隊を残して完全撤退する計画だ。しかし、先月のクンドウズ州の州都クンドゥズの陥落でも示されたように、同国の治安はガラスの上に乗っているようなもの。米軍が完全撤退すれば、あっという間に砕け散ってしまう懸念が強い。
ちょうど米軍が撤退した後のイラクがISによってずたずたにされてしまったのと同じ状況が生まれよう。その後に残るのは、今のシリアで起きているような内戦の激化である。それでなくても腐敗がはびこる政府軍は米軍の監視がなくなれば、規律と統制が崩れ、大方の見るところ、最終的には政府軍が首都カブールなど一部の大都市を押さえ、残りはタリバンやIS、外国人過激派らが占領し、最悪の場合は政府が転覆する恐れさえある。
特に初夏以降の治安は悪化の一途をたどり、8月にはカブール の国防省や警察学校が相次いで自爆テロに襲われ多数の死傷者を出した。国連などによると、タリバンの勢力拡大は2001年以来最大となっており、全国34州のちの約半分で脅威レベルが最悪という事実上、政府の支配が及ばないような状況だ。
こうした中起きたクンドウズの陥落だったが、米軍がタリバン勢力に猛爆撃を加え、政府軍がなんとか中心部を奪還したものの、依然周辺では戦闘が続いており、不穏な状況であることに変わりはない。このため米軍はこのほど、オバマ大統領に対し、来年の米軍の撤退計画を取り下げ、最大7000人の部隊の駐留を継続させるよう進言し、大統領の決断待ちだ。