過激派組織「イスラム国」(IS)が再び蠢動し始めた。米主導の有志連合に加担しているとして日本の外交使節への攻撃をあらためて呼び掛けたのだ。前例をひもとけば、ISのこうした指令に呼応したテロが頻発しており、単なる脅しと侮るのは禁物。在外大使館や外国にいる邦人は最大限の警戒が必要だ。
新十字軍との戦い
この新たな日本へのテロ攻撃は、ISのネット英字機関誌「ダビク」最新号(11号)に掲載された特集記事「新十字軍との戦い」の中で呼び掛けられた。特集は米国とイラン、ロシアを含めた反IS諸国との戦いに焦点を絞り、米国務省が列挙した有志連合リストを引用して、日本を含めた62カ国・組織を「新たな十字軍連合」と非難した。
記事はさらに、予言者ムハンマドがイスラム草創期にメッカの「部族連合軍」と戦って勝利したことを引用し、「新たな十字軍連合」との現在の戦いに重ね併せ、かつてのように忍耐と粘りでこの戦争にも勝つと強調。イラクやシリアの戦闘に直接的に参加できない支持者らに対し、背教者の権益は世界中にあり、どこにいようとも攻撃をためらうべきではない、と強くそそのかした。
そして十字軍の市民を殺害することに加え、米国内のロサンゼルスやニューヨークでの攻撃のほか、日本を名指しし、ボスニア、マレーシア、インドネシアにある日本の外交使節へのテロを呼び掛けた。
ISのこうした“指令”は昨年9月22日、米軍とサウジアラビアなどアラブ4カ国がシリア空爆を始めた直後にも出された。その時も、イラクやシリアに来なくてもいいから、有志国内でテロを起こすよう支持者らに要求。これに呼応するかのように、10月からカナダの連邦議会の乱射テロ、シドニーのカフェ立てこもり、今年1月のパリのスーパーマーケット襲撃、3月のチュニジアの博物館襲撃事件と続いた。
最近でも6月の3大陸同時テロ、8月のフランスの高速列車内での発砲などテロ事件が相次いでおり、今回の新たな“指令”に触発された「ローン・ウルフ」(一匹狼型)のテロが起きる可能性は強い。外務省は在外公館に警戒体制を敷くようあらためて指示したが、外国に駐在中の邦人にも注意を喚起している。特に世界最大のイスラム教国であるインドネシアには2000人を超えるIS信奉者がいるとされている上、バリ島での爆弾テロを起こした過去を持つ過激派組織「ジェマ・イスラミーヤ」がISに忠誠を誓っており、観光地や繁華街などではとりわけ注意が必要だ。