米国が過激派組織「イスラム国」(IS)に対抗するため中核的な政策として進めていた「シリア人部隊の創設」計画が破綻した。軌を一にするようにロシアのシリアでの軍備増強が明るみに出たが、そこにはプーチン大統領のしたたかな政治的思惑が隠されており、オバマ政権は対応に四苦八苦だ。
残ったのはわずか4、5人
このシリア人部隊の創設計画の破綻は16日、中東を統括する米中央軍司令官オースティン将軍が上院の議会証言で明らかにした。将軍は米国が訓練した部隊の戦闘員のうち、シリアに残っているのはわずか「4、5人」にすぎないと証言、ショックを受けた議員から「完全な失敗だ」との声が漏れた。
この計画は米国の対シリア政策の中核。ISが2年前、イラクとシリアの広大な一帯を占領した後、ISと戦わせるため穏健な反体制派を訓練し、武器を供与するという5億ドルの計画が固まった。部隊の規模は5000人で、5月からサウジアラビアやヨルダンで訓練が始まった。ところが、穏健なシリア人の選別に時間がかかり、訓練されたのは約100人にとどまった。
この訓練を終了した第1陣54人は7月、シリアに投入されたが、そこで国際テロ組織アルカイダの分派「ヌスラ戦線」の攻撃を受け、多数が死傷してしまった。この結果、シリアに残留している部隊の戦闘員は4、5人だけとなった。ホワイトハウスの報道官はこの失敗について、大統領は計画にずっと懐疑的だったと指摘、非難されるべきは計画の実現に圧力を掛けた人々だと責任を回避するような姿勢を示している。
報道官はこの計画が困難なものであることが分かった、と見切りをつけたことを明らかにしたが、この計画に代わる案があるわけではない。オバマ政権にISを壊滅し、内戦の終結に向けた戦略はない。当面は空爆に依存していかざるを得ないが、今後は最も信頼できる武装勢力であるクルド人武装勢力との連携を強めていくことになるだろう。