米国は7日のレーバーデーを契機に次期大統領選の指名争いが本格化始動した。民主党は本命のヒラリー・クリントン前国務長官(67)の勢いに陰りが見え始める一方、共和党は大方の予想を裏切って異端児の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)がトップを走り、これを引きずり降ろそうという動きも表面化、早くも波乱含みの展開だ。米政治は来年11月8日の投票日まで大統領選一色に染まる。
暴言、放言に人気
いい意味でも悪い意味でも選挙戦を振り回しているのはトランプ氏だ。8月のロイター通信の調査によると、乱立した共和党17人の候補の中で、トランプ氏は支持率30%と、マイケル・ハッカビー前アーカンソー知事(60)の10%、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)の8%などを圧倒して首位を維持している。
同氏の人気が急上昇したのは、富裕な実業家としての知名度や、手垢に汚れた「ワシントン政治家」ではないことに加え、暴言、放言とも取れる歯に衣着せぬ発言だ。同氏の際どい発言を面白がるメディアが大きく報じ、相乗効果で人気にさらに拍車がかかる、といった具合だ。先月のテレビ討論会は2400万人が視聴、討論会では史上最多を記録した。
そうした発言の第1弾はメキシコからの移民を「レイプ犯」などと決め付けたことだ。差別的な発言に少数派から強い反発を受ける一方、この率直な物言いを一部の白人が喝采した。
また党の重鎮であるマケイン上院議員を批判、同議員を擁護した同僚の議員に怒って、その議員の携帯電話番号を公の場で発表するという信じられない行動にも出た。さらに討論会の女性司会者から厳しい質問を受けたトランプ氏は「彼女の目に血が見えた。どこであれ血が出ていた」と生理を示唆したとして問題になり、女性団体から非難された。
トランプ氏は相次ぐ黒人の暴動についても、「法と秩序」を強調して白人警官の暴力を「99.9%正しい」と正当化、白人の偏見にアピールするような発言を繰り返し、ライバルで、メキシコ人の妻を持つブッシュ元フロリダ州知事がスペイン語を話すことに疑念を投げ掛けた。