2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月12日

 7月7日付の米ワシントン・ポスト紙で、ペトレイアス元アフガニスタン駐留米軍司令官と米ブルッキングス研究所のオハンロン上席研究員が連名で、オバマ大統領は2016年以降もアフガニスタンに部隊を残留させるべきだと主張しています。

画像:iStock

 すなわち、オバマ大統領は、選挙公約実施のため米軍部隊を急いで撤退させてきたと批判されるが、アフガニスタンについては、断固とした対応をしている。2011年7月の撤退開始に先立ち、部隊を3倍に増派したし、部隊縮小も、2010年にISAF(国際治安支援部隊)を2014年末まで引き延ばすことをNATOで合意した上で開始した。オバマは、その後も、約1万名の部隊を残している。

 他方、オバマは、自分の任期が終わるまでに、すべての部隊を撤退させ、小規模の訓練部隊と大使館警備部隊だけを残す計画のようだ。しかし、2017年以降も必要な部隊を残すべきである。アルカイダなど過激派の脅威は終わっていない。また、アフガニスタンの指導者と国民は、圧倒的に米軍の残留を望んでいる。

 アルカイダは近年相当弱体化されたとはいえ、残る指導部や組織は今もパキスタンのパシュトゥン地帯に潜んでいる。東部アフガニスタンに基地を持たないでこの脅威に対処することはできない。インド洋は遠すぎるし、地上の基地が必要だ。

 アフガニスタン政府に対する支援も必要だ。南部のヘルマンド州や北部のクンドゥーズ等には問題があるし、東部はハッカニの脅威にさらされている。

 もちろん、カブールは安全になってきているし、タリバンの根拠地であったカンダハルは政府側が制圧した。6月に発表された今年の米国防省「アフガニスタン治安安定向上報告」によれば、タリバンの活動範囲は拡大しているものの、タリバン側の犠牲者は増大し、戦略的な成果もあげていない。しかし、政府側の犠牲も昨年の5割増になっている。タリバンは政府部隊の力を試している。

 このような状況では、米国はイネイブラー(空軍力、諜報、戦闘支援、特殊部隊)の撤退には慎重であるべきだ。一部基地と数千規模の米・NATO部隊を残すべきだ。これを来年のポーランドでのNATO首脳会議で決めるべきである。


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