2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月12日

 部隊残留のためには、年間50-100億ドルが必要となるだろう。米軍の犠牲者も出るだろう。しかし、今までの2000人を超える犠牲者と約1兆ドルの支出や再度の大規模テロの悪夢を考えると、そのコストは堪えることができるものである、と主張しています。

出 典:David Petraeus & Michael O'Hanlon ‘The U.S. needs to keep troops in Afghanistan’(Washington Post, July 7, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/afghanistan-after-obama/2015/07/07/63dd6dc2-1e8e-11e5-aeb9-a411a84c9d55_story.html

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 2014年12月、ISAFの任務終了式典が行われ、アフガニスタン治安部隊への権限移譲が完了しました。2015年からは、NATOによる訓練、支援に移行しました。オバマ大統領は、米軍戦闘部隊を撤退させた後も、約9800人の部隊を訓練等のため駐留させていますが、それも段階的に撤退させ、2016年末までには完全に撤退させる方針を発表しています。ただし、本年3月、オバマ大統領は、アフガニスタンのガニ大統領が訪米した際の要請を受け入れ、段階的撤退計画を止め、2015年末までは9800人体制を維持することにしました。ただ、2016年末までの完全撤退は変更していません。

 ペトレイアスとオハンロンの米部隊残留論の主張は、理解できます。過早な完全撤退は、アフガニスタンがイラク化するリスクを引き起こします。これは避けるべきです。タリバンは勢力を拡大しています。タリバンや軍閥は米軍の完全撤退を待っているでしょう。アルカイダは米国の攻撃を受けつつも引き続き活動しています。そして、今やISがアフガニスタンに浸透しつつあるのではないかと言われています。他方で、治安業務の移譲を受けたアフガニスタン政府軍や警察などは能力を向上させている面もありますが、充分なほどには向上していないといわれます。2014年9月に大統領に就任したアシュラフ・ガニは、対米関係を修復し、パキスタンとの関係も強化し、米部隊の残留を望んでいます。

 アフガニスタンが過激派の拡大などで再び内乱化することは、この地域を大きく不安定化させます。

 オバマは、イラクの戦争には反対し、アフガニスタンの戦争には「必要な戦争」として理解を示してきました。

 オバマが方針通り2016年末に米軍を完全撤退することができるかどうかは、今後の大統領選挙の帰趨にもよるでしょう。次期大統領は、2016年11月には決まります。タイミング上も難しいことになります。共和党候補者は、総じて、オバマの撤退計画には反対が強いです。民主党ヒラリー・クリントンは米軍残留にオープンだと言われています。両党の選挙綱領が残留論になることもありうるのではないでしょうか。選挙の動向を注目したいと思います。

  
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