2024年4月18日(木)

WEDGE REPORT

2015年10月14日

タリバンに挑むIS

 アフガニスタンは元々、オサマ・ビンラディン率いる国際テロ組織アルカイダの牙城だった。アルカイダは今も、ザワヒリら指導者がパキスタンとの国境の部族地帯に潜伏していると見られている。これら部族地帯を含めアフガニスタン東部 のナンガルハル州に拠点を築き、勢力を拡大しているのがISだ。

 そのISの中核は、パキスタンの過激派「パキスタン・タリバン運動」からの離脱組だ。昨年10月に同運動の幹部6人がISの指導者バグダディに忠誠を表明。タリバンが今年7月、伝説的な指導者オマル師の死亡に伴ってマンスール師を指導者とする新指導部に移行した際、これに反旗を翻した一部もISに合流した。ISは今年初めアフガンに「ホラサン州」の樹立を宣言。勢力は現在、パキスタン人多数を含め数百人の規模と見られている。

 しかし、ISは住民に「味方につくか、タリバンにつくか」と2者選択を迫って急速に勢力を拡大、5月ごろからタリバンと衝突するようになった。特にナンガルハル州の州都ジャララバードの南、東部でタリバンを攻撃、一部を完全に支配した。シリアのISが当初、反体制派を次々に攻撃していったのと同じだ。

 ISの攻撃にさらされたタリバンのマンスール師は6月、バグダディに書簡を送り「アフガンのジハード(聖戦)が分裂しかねない。干渉するな」と要求したが、バグダディは事実上、この要求を無視し、タリバンへの攻撃を続けた。懸念されるのは、「ウズベキスタン・イスラム運動」(IMU)などの既存の過激派もISに帰順し、中央アジアにもISの影響力が拡 大しつつあることだ。

 今回のクンドウズ制圧のタリバン勢力には、IMUなどの外国人戦闘員も多数合流していたとの情報もある。 IMUの目標はクンドウズなどアフガニスタン北部に聖域を作り、そこからアフガニスタンや旧ソ連邦のタジキスタン、ウズベキスタンなど中央アジア諸国の世 俗政権を不安定化させることにあるとされる。IMUとISがさらに関係を強化すれば、アフガニスタンから中央アジア一帯がイスラム過激派の勢力圏になりか ねない。オバマ大統領が米軍残留にどんな決断を下すか、極めて重いものになる。

  
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