2024年4月19日(金)

メディアから読むロシア

2015年10月26日

 同訓練には、約150点の軍事機材が投入された。空からは、西部軍管区の航空部隊に所属するKa-52ヘリコプターが火力支援を実施した。Ka-52攻撃ヘリコプターの編隊は、降下に先立って仮想敵部隊に対する攻撃を行い、降下地点の安全を確保した。

現代的な電子制圧手段

 21世紀の武力闘争がますます高度技術化し、無人化システムによる偵察及び攻撃を特色とするようになったことに鑑み、「同盟の盾2015」演習では現代的な電子制圧手段が活発に使用された。

 西部軍管区の電子戦部隊は、演習の第二段階において、仮想敵の無人機を妨害するために「ジーチェリ」自動電子妨害システムを使用した。「敵」は無人機を使用して連合国家地域連合部隊の隷下部隊に関する情報を入手し、主攻方向を特定しようと試みた。しかし、西部軍管区広報部長のオレグ・コチェトフ中佐によると、電子戦部隊は「ジーチェリ」妨害ステーションを用いて敵UAV(無人機)の管制及び情報伝達周波数を特定し、妨害電波を発振して通信回線をブロックした。この任務は、「ジーチェリ」のオペレーターがUAVの管制システムを妨害する一方、同地域における我が航空機の活動は妨害しないようにするという複雑なものであった。

 電子戦部隊が空中で「敵」と戦う一方、通信部隊はバーチャル空間での戦いを繰り広げた。演習シナリオにおいて、非合法武装勢力の「ハッカー」達は、情報の撹乱及び欺瞞情報の流布を目的として地域連合部隊の通信回線にネットワーク攻撃を仕掛けようとした。そこでサイバーテロリストからの防護のため、通信部隊はネットワーク攻撃の監視システムを運用した。

 もちろん、ハッカーや「ゲーマー」達と、我が通信部隊の戦いの詳細を明らかにすることはできない。ここでは、通信部隊が機器コンプレクス及びプログラムにインストールされた「ファイヤーウォール」を用いて機器類の機能状態を間断なく監視したとだけ言っておこう。

 「ファイヤーウォール」は侵入の試みを即時に通知し、その後、オペレーターは手動で攻撃側コンピューターをブロックするとともに、三つある予備回線(ケーブル、衛星、又は電波回線)のひとつへと通信を移行させた。
こうした訓練はすべてのシナリオで実施され、それぞれのシナリオでは3-4回のサイバー攻撃が実施された。

 (後略)

米軍のステルス無人偵察機を
ハッキングして強制着陸させる

 この記事の興味深い点は主に次の二点である。第一に、依然として無人偵察機戦力で劣勢にあるロシアは、それが電波によって敵の操縦者と紐づけられている点を逆手に取って電子妨害を行い、その無力化を図っている。これまでにも、イランがそれまで存在さえ知られていなかった米軍のステルス無人偵察機RQ-170をハッキングして強制着陸させた事例が知られているほか、ウクライナ紛争でも、ロシア側、ウクライナ側双方がこうしたオペレーションを実施していると言われる。


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