2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月4日

 ウォールストリート・ジャーナル紙は9月27日付社説で、先般の米中首脳会談でサイバーに関し合意が成立したと発表されたが実際は何も合意されていない、と述べています。

iStockより

 すなわち、米中首脳会談に関するホワイトハウスのファクトシートは、(1)いずれの政府もサイバーによる知的財産の窃盗はしない、(2)それぞれの国内法に従ってサイバー犯罪を調査する、(3)ハイレベルの合同対話メカニズムをつくる、(4)問題がエスカレートした場合のホットラインを設ける、ことに合意したと記している。

 これは、双方が何も合意しなかったことを入念に言っているにすぎない。

サイバースパイ続ける中国

 習近平は、中国政府はいかなる形でも商業機密の窃盗はしていないし、民間会社に慫慂もしていないと言っている。そうとすれば何が問題なのだろうか。

 合意事項の実行可能性については、「それぞれの国内法に従って」というが、中国では共産党が法を超越しており、党が支配している企業もそうである。習近平が問題の存在を認めないなら、子分たちも認めないだろう。そうであれば米国政府も、中国のサイバースパイについて知っていることの多くを明らかにしたがらないだろう。米国の情報源と手段に関する秘密を漏らす恐れがあるからである。

 要するに、中国は、サイバー窃盗をやめないだろう。かつて、2007年にF-35戦闘機製造の契約社をサイバー攻撃し、それで得た情報に基づいて中国がJ-20、J-31のステルス機を作ったような成果は捨てないだろう。

 習近平はサイバーの合意で、南シナ海に関し、中国が長年得意としてきた外交上のゲームをする機会を得た。すなわち、アジアの近隣諸国と領有権と行動規範につき、終わることのない交渉を行う一方で、領有権を争う環礁を支配し、島を作り、海洋交通に干渉する。クラウゼヴィッツを借用すれば、中国にとって外交とは、他の手段によるサイバースパイの継続である。

 オバマ大統領は習近平との共同記者会見で、サイバー犯罪には、制裁を含むあらゆる手段で対処すると言ったが、オバマは大統領就任以来、言行が一致したことがない。中国はオバマ後の政権で代価を払うまで、サイバースパイは続けるだろう、と指摘しています。

出典:‘The Obama-Xi Cyber Mirage’(Wall Street Journal, September 27, 2015)
http://www.wsj.com/articles/the-obama-xi-cyber-mirage-1443387248


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