2024年4月21日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月4日

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 米中首脳会談の中心議題は、南シナ海とサイバーでした。南シナ海に関して、習近平は南シナ海の島々は太古の昔から中国領であると述べ、オバマの懸念に耳を貸しませんでした。両者の議論は平行線をたどり、対立が浮き彫りにされました。

 サイバーに関しては、両首脳は、両国政府は商業機密窃盗のためのサイバー攻撃はせず、そのような攻撃は支援しないと述べ、サイバー攻撃に対処するためのハイレベルの対話の場を設けることに合意しました。

 この社説は、習近平が首脳会談に先立つ同紙とのインタビューで、中国政府はいかなる形でも商業機密の窃盗はしていないし、民間会社に慫慂もしていない、と言ったことに触れ、そうであればこのような合意は意味がないとして、サイバーに関する合意は蜃気楼であると述べています。果たしてそうなのかは、合意事項が実際に実施されるかどうかによります。

 中国の言行は往々にして一致しません。最近の代表例は、南シナ海に関する習近平の発言です。習は首脳会談後の共同記者会見で、「中国は善き隣人として近隣諸国との協調を重視する…南シナ海での平和と安定の維持にコミットしている…国際法に基づく航海と航空の自由を尊重し、維持する…」と述べています。

 これが中国の行動といかに乖離しているかは明らかです。サイバーに関しては、社説が言うように、これまでサイバー攻撃で多大の利益を得てきた中国が、攻撃を完全に止めるとは思えません。米国の反応を見極めつつ、得意のサラミ戦法で、サイバー攻撃による米国の商業機密の窃盗を続ける可能性が高いでしょう。その場合、米国はオバマが共同記者会見で明言した通り、制裁を含むあらゆる措置を取るかどうかが注目されます。そして、そういうことになれば、サイバーに関する今回の一連の合意は意味がなかったことが明白になります。

  
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