世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月5日

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 ロシア空軍は一時的にはアサドを支えられるかもしれないが、アラブ世界のスンニ派ムスリムに嫌悪されている指導者を支持するという危険なゲームをロシアはしている。反乱軍側は「アサドの側に立ついかなる勢力もシリア人の敵である」と警告している。 失敗に終わったアフガン侵攻から36年、ロシア軍はジハーディスト戦士との戦いに再び向かっている。プーチンはフルンゼ軍アカデミーによるアフガンの教訓についての1991年の研究(英訳:The Bear Went Over the Mountain)を見直したらいい。著者たちは、ムジャヒディンの狡猾さなどを描写、「ロシア市民は自分たちの息子がなぜ見知らぬ土地での戦いのために徴兵されているのか分からなかった」と指摘している。オバマはシリアにおけるロシアの軍事介入の危険について誤判断したかもしれないが、プーチン自身も誤った判断をしたのかもしれない、と論じています。

出典:David Ignatius,‘Russia and the “facts on the ground” in Syria’(Washington Post, October 1, 2015)
https://www.washingtonpost.com/opinions/russias-facts-on-the-ground-in-syria/2015/10/01/45fe3bb2-687e-11e5-8325-a42b5a459b1e_story.html

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シリア介入によりロシアは衰退へ

 この論説の内容には大体賛成できます。アサドは多くのシリア人、シリア内外のスンニ派ムスリムに嫌悪されている正統性をすでに失った指導者です。ロシアとイランが支援しても一時的にはともかく長続きはしないでしょう。アサドの下でシリアが安定するシナリオは考え難く、今アサドを延命させようとすれば内戦を長引かせることになるでしょう。

 サウジその他のスンニ派諸国はイランと組んだロシアに反発し、これまで見られた関係改善の動きは止まることになるでしょう。外交的にはロシアは一時的に脚光を浴びるでしょうが、シリア問題を含む中東の諸問題への発言力は強化されるよりも弱体化する可能性が強いと思われます。アサドなき後のシリアで、ロシアがこれまで同様軍事基地を保持し続けられるか、疑問です。

 ロシア国内でも、一時的にプーチンは世界の舞台で活躍しているとの称賛が得られるでしょうが、例えばシリアでロシア軍兵士が殺されたりすれば、なぜロシアがそういう介入をしているのか、「兵士の母」団体などが 抗議の声を上げることがあり得ます。

 ロシアの空爆の対象はISに限らず、米国が応援している反アサド勢力も含んでいるようです。最近は偵察衛星や無人機での偵察能力は発達しており、ロシア軍の行動は正確に捕捉できます。ロシアはウクライナなどでは西側の偵察能力を甘く見て、嘘をついたりしています。シリアでもそういう試みをするでしょうが、嘘を後に暴露され、名誉が傷つくだけでしょう。

 旧ソ連崩壊に至った要因の中で、アフガン侵攻の失敗はかなり大きな割合を占めています。ブレジネフはアフガンで苦労しましたが、プーチンはシリアで苦労し、ロシアのさらなる衰退の種をまくことになるかもしれません。

  
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