海外製品にある「らしさ」
冒頭書きました掃除機をイメージしてみてください。サイクロン掃除機の「ダイソン」、スティック型掃除機の「エレクトロラックス」、ロボット掃除機ルンバの「iRobot」等、メーカーとカテゴリーを聞くだけでその製品の明確なイメージがわきます。
それは商品の魅力が出ているということですし、だからこそ、日本でも支持されるという言い方もできます。これに比べると、日本製品はイメージがあやふやです。「和を尊ぶ」と多くの場合、船頭が多くなり、個性が埋没してしまうからです。ハーモニーの作り方と同じです。
オーケストラ団員が奏でる音を、一つの方向へ向かせるのが指揮者です。
指揮者は、自分の作りたい音を団員に提示し、ハーモニーを要請します。
それが人により異なる。これがオーケストラの、指揮者の個性に、「らしさ」になるわけです。
商品開発の背骨はコンセプト
「らしさ」の基本は、「コンセプトと技術の融合」です。先ほどの例で言うと、指揮者がコンセプト、オーケストラが技術です。ただメーカーには、指揮者はいません。指揮者に近い人は、創業者でしょうか? 創業者は「自分が作りたいモノがある」ために、会社を興すわけですから、やりたいこと、つまりコンセプトが明快なわけです。で、技術も多くの場合、自分が持っています。
だからぶれないわけです。
コンセプトが明確であると言うことは、最終商品が見えているということです。これはスゴく重要なことです。日本の中小企業はよく「技術はあるのに……」という言われ方をします。加工業だとそれで良いと思います。メーカーは違います。作るなら、この商品コンセプトを明確にしなければなりません。そうでないと、技術者は戸惑うばかりです。
欧州におけるハーモニーの厚み
さて、ベルリン音楽祭は、ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラの本拠地、フィルハーモニー・ホールで開催されます。当日の演目はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」。演奏はボストン交響楽団。指揮はアンドリス・ネルソンス。ボストン交響楽団は、小澤征爾が、1973年〜2002年まで音楽監督を務めていましたから、ご存じの方も多いと思いますが、アメリカ・ビッグ5の1つで、弦に定評があります。
拍手に続き、演奏が始まります。今まで聴いたことのない、極めてしなやかな弦の音がしたと思うと、その中に全ての音が溶け込んでいくようです。ちょっと比類がありません。このハーモニーは指揮者、オーケストラにより奏でられますが、もう一つ、ホールの響きが加わります。
日本は、あれだけ箱物にお金をつぎ込みましたが、ホールの響きでイイのは少ないです。ちなみに、フィルハーモニー・ホールを模して作られたのがサントリーホールと言われていますが、やはりかなり違いますね。本場モノのスゴさを見せつけます。久しぶりに、音楽ではなく、音に酔いました。