ソニーからスピンアウトしてVAIOが新会社になって1年。6月に、大田義美氏が、代表取締役として就任されました。大田氏は、ニチメン(現双日)入社。商社畑で活躍された後、サンテレホン社長を経て、VAIO社長に請われた方で、PC畑ともソニーとも無縁の所から来られた人です。その様な経歴の方が、今は独立していますが、ソニーでも有数のサブブランドだったVAIOをどちらの方向へ率いて行くのか興味があり、インタビューを試みました。
「きちんとした会社組織で
自活できることが、第一目標」
「VAIOをどちらの方向へ率いて行くのか」とストレートに質問してみました。そうすると次の様な答えが返ってきました。
「ソニー時代のVAIOは一事業部でしたので、営業はソニー・マーケティングを含め、ソニー系列の販売会社が行っていました。これだと、商品を開発、生産、そして販売するというメーカーとしての仕事が閉じていません。このため、今年から国内営業をソニー・マーケティングに委託しながらも、自前の営業部隊を持ちます。売り込みも手がけますが、主にはユーザーと密なコミュニケーションをダイレクトに取り、商品にフィードバック、商品力を高めて行くことに力を入れます」
当たり前といえば、当たり前の回答です。しかし、私が注目したのは、VAIO事業部に営業部がなかったことです。この販売方法がソニーのやり方であり、このためにVAIOの商品仕様は、ユーザーオリエンテッドではなく、メーカーの独りよがりの部分が多分にあったそうです。
VAIOはPCに後期参入したメーカーとしては成功した部類です。だからこそ今でもブランドがあるわけですが、2つの意味で、面白い話だと思いました。1つめは、マーケティングは、商品を作り上げる時、欠かせないことの1つでもありますが、実は調査の方法によっては全く役に立たないことがあります。というのは、多くの場合、調査は言葉により行われますが、言葉というモノは使い方が人により異なるためです。要するに、マーケティング調査をしたはいいが、データーを読み違えましたという、ありがちな話です。
あと1つは思い込みの強さです。実は底光りしている様に感じられる魅力ある商品は、思い込みから生まれます。それはどういうことかと言うと、発案者が本当に欲しいと思っているモノを、そのまま組み立てると優れた製品が生まれることが多いからです。
ウォークマンなどは典型例ですね。当時としては、録音機能がない、スピーカーのない機器はなかったからですね。それを「飛行機の中でも音楽が聴きたい!」というので、作らせたのが始まり。この延長線上にあったのが「どこでも音楽が聴きたい」というニーズ。かくして、世界的な大ヒットになるわかる様な気がします。そうなると、あの差別化が難しいPCの商品群の中で、VAIOがある種の輝きを放っていた理由もわかります。