世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月17日

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米軍駐留継続は和平への第一歩

 一方、WP紙社説の論旨は以下の通り。

 すなわち、オバマは今夏まで、アフガン政府、米司令官、NATOの同盟軍からの再考要請にもかかわらず、残りの米軍を大統領の任期が終わるまでに帰還させることに固執していた。オバマが10月15日にアフガンの現実に従い方針を転換したことは称賛に値する。2017年に5500人の対テロ部隊、訓練部隊を残すとの新しい計画は、アフガンに成功のチャンスをもう一度与え、次期米大統領が危機から免れることにもなろう。

 先月のクンドゥズ奪取が示す通り、タリバンは依然として強力である。米軍の空爆などの助けを得てアフガン軍はクンドゥズを奪還できたが、オバマがもし来年末までに米軍のミッションを1000人規模の大使館防衛部隊に縮小する計画を進めていたならば、アフガン政府はさらに多くの都市への統制を失っていただろう。米軍の時期尚早の撤退がISの台頭を可能にさせ結局米軍が戻ることになったイラクでの破局が再現されかねなかった。

 パキスタンの最近の対テロ作戦は、アルカイダをアフガン側に追いやり、一方、ISもアフガン内で拠点を持ち始めている。新計画では、カンダハル、ジャララバード、カブール郊外のバグラム空軍基地に展開される米対テロ部隊が、そうした脅威を標的に出来る。米国のアドバイザーは、タリバンの攻撃を鈍らせるべく、空軍や特殊部隊などのアフガンの重要な部隊と協働し続けることができる。米軍駐留継続は、反乱軍にガニ政権との和平交渉を促し得る。

 今回の決定を受け、ドイツその他のNATOの同盟国もアフガンへの展開を延長することになろう。しかし、オバマの新計画では兵員数が少な過ぎる。2016年は9800人の米軍を維持するが、オバマの後任にはそれより40%も少ない人員(5500人)しかない。これは、タリバン、アルカイダ、ISの複合的脅威に対応するには不十分である。ただ、それでも、米次期新大統領は、複数の基地を拠点とした機能的な米軍部隊を継承することにはなる、と述べています。

出典:‘Obama bows to reality in Afghanistan’(Washington Post, October 15, 2015)
https://www.washingtonpost.com/opinions/obama-bows-to-reality-in-afghanistan/2015/10/15/d22a04fe-735f-11e5-8248-98e0f5a2e830_story.html

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 今回の見直しが、イラクの轍を踏むべきでないとの考慮から行われたことは間違いありません。イラクからの米軍撤退後、マリキ首相のシーア派優先策がスンニ派を疎外し、国は分裂状態となり、その間ISが急速に勢力を伸ばしました。米国はあれだけの財政的、人的犠牲を払いながら、イラクを失いました。

 今アフガンは、タリバンが一時クンドゥズを占拠するなど勢力を増し、ISも蠢動しています。アフガン政府軍だけでこれらに対処することは不可能であり、イラクの二の舞を防ぐためには米軍の引き続きの駐留が不可欠です。WP紙が今回のオバマの方針転換は称賛に価すると言っているのは当然です。

 反戦が社風のNYT紙も、オバマの方針転換は憂慮すべきであると言いつつも、オバマに他の選択肢はない、と言っているのは、アフガンの現実を認めざるを得なかったことを示しています。

 イラクとアフガンの違いの一つは、指導者の対米態度です。イラクのマリキ前首相が米国に不信感を抱いていたのに対し、ガニ大統領は米軍の駐留継続を繰り返し要請しました。ガニ大統領の要請が今回のオバマの決定に影響を与えたことは想像に難くなく、このようなガニ大統領の姿勢は今後の米国とアフガンとの協力推進に大きなプラスとなるでしょう。

  
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