2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月9日

 フィナンシャルタイムズ紙のコラムニスト、フィリップ・スティーブンスが10月8日付同紙に、モディ首相の目標は21世紀を「インド太平洋の世紀」にすることであり、それはうまくいきそうである、との論評を書いています。

Getty Imagesより

中国進出を食い止める防御壁となり得るか

 すなわち、中国の台頭に対するアジアにおける戦略的再編には、米国だけでなく、インドも重要な関与をしている。インドにとり重要なのは中国と米国で、前者は脅威、大声では言わないが後者は不可欠の同盟国である。欧州は脇役に過ぎない。

 モディは国際舞台において精力的である。2014年5月の就任以来、20余国を訪問し、古い関係を一新し、新たな関係を構築している。21世紀を「太平洋の世紀」と呼ぶのが一般化してきているが、モディはそれを「インド太平洋の世紀(Indo-Pacific century)」に変えたがっている。

 インド外交の柱は二つである。第一は、経済成長と地政学的重みの不可欠のリンクである。政策立案者は、インドの成長は中国より早く、中国は高齢化が進んでいる、などと言うが、インド経済は中国経済の数分の一の規模でしかない。追いつくには、適切なインフラ、外国からの投資と最新技術の多くが必要である。それゆえ、モディの外遊には経済的側面がある。先日習近平が訪米した際、モディはシリコンバレーの巨大企業にインドの夢を売っていた。モディと日本の安倍総理はリーダーシップについての見方を共有しているが、両国関係に深みを与えているのは、両国がビジネスで協力できるとの理解である。

 第二の柱は、近隣との関係である。かつての指導者たちは、近隣の小国に高圧的に対応した。パキスタンとの周期的な紛争にエネルギーが集中され、ネパール、スリランカ、バングラデシュ、ブータンなどは閑却されていた。モディは状況を変えた。カシミールをめぐるパキスタンとの対立は常に緊張の源だが、モディは、大国は近隣の不安定をうまく弱めることが出来るものである、と理解している。そして、公式には大っぴらには語られないが、中国の地域的野望への懸念がある。中国は懸命にインドの近隣国の機嫌をとっている。習近平の一帯一路戦略は、中国をユーラシアで突出した勢力にすることを目論んでいる。インドにとり、欧州へのシルクロードの再開、中国のインド洋進出は、包囲と感じられる。


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