9月2日付の米ロサンゼルス・タイムズ紙で、中国軍事専門家のロジャー・クリフ米アトランティック・カウンシル上席研究員が、同紙記者のインタビューに応じる形で、中国人民解放軍の実力について分析しています。
すなわち、軍事力を分析する際、戦車や兵員の数など物質的側面に注目しがちだが、どれほど訓練・組織されているか、兵士の質も重要である。
米軍兵士のようによく訓練された中国兵
最近の中国軍はハードウェアの面でも向上しているが、より驚くべき発見は兵士の質が上がっていることだ。もはやかつての農民兵ではなく、現在の中国軍は米軍兵士のように、よく訓練されているように見受けられる。
中国軍がすぐに米軍を追い越すことはなくても、差が縮まっているのは事実だ。中国軍が配備しようとしているシステムは、米軍の構成に似てきている。
一方、米軍が使っている装備の多くは、1980〜90年代に就役したものだ。というのも、米国はここ10年、中東での低強度叛乱戦に足を取られ、次世代システムへの進歩をあまり行ってこなかったからである。2020年までに中国軍の装備は、2000年の米軍と同じような形となるはずだ。一方、米軍の装備は2020年になっても、それほど近代化が進んでいないだろう。
1999年頃から、中国軍は、第二次大戦初期のドイツ軍のように、正面から戦闘するのを避け、迂回と機動を重視して敵の弱点を突くドクトリンを強調し始めた。しかし、中国軍は、こうしたドクトリンを実行できる組織構造・文化を持っていない。迂回と機動を重視するドクトリンを用いるならば、分散化され、現場が最適な意思決定をできるようになっていなければならない。また、前線部隊同士は、互いに直接連絡がとれるような水平的連携が必要となる。だが、中国軍の組織構造はこの逆だ。極めて中央集権的で、あらゆる決定が上層部に回される。誰もイニシアチブや責任をとりたがらない。
組織文化にも同じ問題がある。機動性、革新性のあるドクトリンを望むなら、イニシアチブや創造性などリスクを冒すことを評価してくれる組織が必要だが、中国軍は規律と忠誠心を評価する組織で、現場指揮官が一瞬の機会を生かして迅速な決断をできるようにはなっていない。これは中国軍の根本的弱点だろう。
中国軍にとっての利点の1つは、起こりうる紛争が彼らの裏庭で生起するであろうということだ。米国が戦争に巻き込まれる場合、地球の裏側にまで戦力を投射する必要があるが、中国は自分の庭で戦えるというのが利点となる。
腐敗は2つの点で重要だ。第1に、腐敗と関連する明確なコストがある。腐敗でやりとりされる金は、装備を買う代わりに、昇進を得るために使われている。組織の効率性にも問題が生じる。昇進に賄賂が絡んでいると、昇進できるのは最も多額の賄賂を提供できる者となり、能力の高い者が出世できなくなる。
腐敗は忠誠心を高く評価する組織ではびこりがちだ。問題は、中国指導部がこの根底にある価値観を変えずに、腐敗を撲滅しようとしている点である、と述べています。