2024年4月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月19日

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 中国軍事問題専門家のロジャー・クリフが中国軍の強みと弱みについて解説しています。中国軍の開発した最新兵器の個々の具体的状況については言及を避けているため、物足りなさは残りますが、巨視的に見て傾聴すべき内容となっています。

兵器開発レベルは20年遅れ

 クリフによれば、中国軍事兵器のハードウェアのレベルは、目に見えて上昇しつつあり、米国軍事兵器との差はどんどん縮まりつつあります。大まかに見て、その兵器開発のレベルは米国と中国の間でまだ20年ぐらいの差があるものの、最近の中国の兵器の近代化の進展状況には警戒を怠ってはならない、と警鐘を鳴らしています。

 米国の軍事兵器との差が縮まってきた大きな理由の1つに、米国はこの10年余り、中東の低強度の紛争に対処することに重点を置いてきたので、次世代の最新兵器の開発がおろそかになってきた、と言います。

 クリフは中国軍の持つもう1つの利点として、兵士の質がかなりあがってきたことを挙げており、中国兵はかつて思われていたような「農民兵(a peasant army)」ではなく、質的によく訓練された兵士になってきた、と述べています。

 他方、中国軍がもつ大きな弱点として、中央集権的であらゆる決定が上層部にまわされ、現場では誰もイニシアチブをとろうとせず、責任をとる手続きが極めて曖昧であるとし、同時に、腐敗汚職が軍内部にも浸透している、と指摘しています。

 中国軍はクリフの指摘するような強みと弱みをもちつつも、先日の軍事パレードに見られたように、近代化のレベルにおいて米国兵器との差を一段と縮めつつあるのは間違いないところでしょう。

 今後西太平洋で起こり得る紛争は、米国から見れば地球のほぼ裏側まで戦力を投射しなければならない事態ということになりますが、中国にとっては自分の「裏庭」で戦えるという有利さがあります。中国の対外拡張主義に変化のないかぎり、安保法制を整えた日本が今後、この地域で安全保障上果たすべき役割は、増えることはあっても、減ることは無いでしょう。
  
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