国民党内の今回の反乱は、中国の民進党政府に対する態度を硬化させ、両岸関係、更には対米関係の緊張を高めることになるのではないかとの懸念を増やす可能性がある。7年間に亘って穏やかだった両岸情勢は急速に終わりに近づいている、と述べています。
出典:Rupert Hammond-Chambers,‘Taiwan’s Election Drama Is a Message to Beijing’(Wall Street Journal, October 18, 2015)
http://www.wsj.com/articles/taiwans-election-drama-is-a-message-to-beijing-1445190293
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民進党政権成立で中台関係振り出しに
台湾の与党国民党は公認候補を洪秀柱から朱立倫に挿げ替えましたが、国民党の巻き返しは難しいと見られています。総統選挙では、民進党の女性候補蔡英文が20%程度リードしており、同氏が勝つと見られています。なお、今回の候補挿げ替えで、女性候補同士の対決という構図はなくなりましたが、蔡英文が勝てば初めての女性総統になります。
他方、立法院の選挙で国民党が10年以上維持してきた過半数を確保できるかどうかが注目されています(総議席は113、国民党現有議席は65、57になれば過半数を割る)が、朱立倫になっても国民党は厳しい状況にあるようです。
民進党の蔡英文が勝てば、中台対話も仕切り直しになるでしょう。同候補は、現状維持を基本的立場とし、国民党に比べ中台関係により慎重である。また、それとは反対の意味で、蔡英文は民進党のかつての陳水扁総統に比べより中道寄りです。このことは、中台間の摩擦増大を望まない米国との関係で重要です。台湾では、現在、対中ムードが変化しているようです。国民党候補の挿げ替えも洪秀柱の中国寄りの姿勢や発言が党内で拒否されたことが背景にあります。対中関係への不安は、両岸サービス貿易協定に反対する学生が立法院の建物を占拠した、昨年春のひまわり学生運動の背景でもありました。
ハモンド=チャンバースは、中国にも今回国民党候補の挿げ替えの意味合いはシグナルとして伝わることになったとし、そのために今後の中台関係が緊張する可能性があると指摘しています。今までのような穏やかな中台関係は終わることになりそうです。台湾情勢はアジア太平洋の安全保障に直結します。中国は、必要とあらば統一に武力も使用することを公式の政策としています。両岸関係には今後とも注目していく必要があります。
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