ハモンド=チャンバース米台商業協会会長が、10月18日ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、台湾国民党の総統候補差し替えは、今後の中台関係、米中関係の緊張を高めることになるのではないかとの懸念を引き起こすかもしれない、と述べています。
人気低迷の与党 候補差し替えで巻き返しなるか
すなわち、10月17日に、台湾の与党国民党は、臨時党大会で、来年1月16日の総統選挙公認候補の洪秀柱を撤回し、朱立倫を新たな候補にすることを正式に決めた。洪秀柱については支持率が低迷、民進党の蔡英文との差は開くばかりとなっていた(9月には30%の差)。洪秀柱の中国寄りの政策は、多くの有権者の不評を買い、立法院で国民党が過去10年以上維持してきた過半数を失う可能性も出ていた。
中道の朱立倫(54歳、台湾北部、新北市長)は、国民党の人気を改善するだろう。しかし、公認候補差し替えを巡る国民党内のゴタゴタは党の内部対立をさらけ出すことになった。朱立倫が国民党の選挙体制を再構築できるどうかはわからない。
朱立倫の擁立は立法院選挙でも勝つことを目指す民進党に圧力をかけることにはなるだろう。しかし同氏は立法院での議席を三分の一まで減らすかもしれないと述べている。同氏は、国民党だけが中国との平和的な関係を築いていけることを強調していくだろう。経済については、現在の馬総統の対中経済協力政策を踏襲するものと思われる。TPP等の地域取り決めに参加することも求めていくだろう。5月の習近平との会談では、AIIB、一帯一路構想、RCEPへの参加も示唆した。
洪候補の撤回は今後の両岸関係に影響を与える。同氏は、「一つの中国、同じ解釈」政策(中国は台湾政府を認めるが、国としての中華民国の存在は認めない)を支持するとしてきたが、台湾の過半数の人々がこれを拒否している。世論調査では一貫して8割以上が現状維持、事実上の独立を支持している。洪秀柱の立場を支持する者は2割以下にすぎなかった。国民党が洪秀柱の対中政策を拒否したことは、北京に対して、双方の関係緊密化の政治的限界を伝えるものとなった。