2024年11月22日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2009年10月29日

錦秋の景色を楽しみながらいただく
お弁当は格別

 日本のお米が冷めても美味しいからか。外国人には日本料理はどれも前菜に見えるというが、ならばこそ、冷めても美味しく、弁当向きの御馳走が揃っているのか。 

 ともあれ、料理屋さんでいただくのと、また違う風情、楽しみがある。興がのれば、そのまま、下の公園、あるいは八坂や祇園、あるいは錦の市場の方に散歩に出かけてもいい。いや、錦は危険か。また、有次(ありつぐ)で包丁など買い込んでしまい、妻に怒られそうだ。

 京都には仕出しという伝統がある。より正確に言えば、それは日本中にかつてあったものだ。中でも京都ではちょっとした行事に仕出しを頼むことが習慣となっており、それが特に洗練され発達した。

 京都の友人たちに聞くと、今でも、たとえば南座に席が取れたとなると、幕間の仕出しはさて、どこに頼もうと考えること自体が楽しいのだという。あるいは祇園のお茶屋さんでも、お料理は菱岩のような仕出し屋に注文する。

 お弁当や仕出しにはそのような世界があるということだ。特に京都、では。

 で、京都駅の改装でジェイアール京都伊勢丹が入ったところで、仕出し屋や料亭の、特別なお弁当を注文で買うことが出来るシステムが作られた。おかげで、気軽に京都が、弁当の極致が味わえるようになったというわけなのだ。

 気軽というが、いい値段じゃないかと言う声もあるかもしれない。しかし、料理屋さんに行くことを思えば、お安いものでは?

 まして、私たちのような胃袋が小さくなりつつある夫婦なら、ぎっしりとあれこれ詰まった折はひとつで十分。それに今回もうひとつ頼んだ「はつだ」の和牛弁当のようなもの、あるいは押し寿司の盛り合わせの小さいのでもあれば十分ではないかしらん。

 そうそう、この和牛弁当が、見た目では東京にあるすき焼きのようなお弁当かと思ったら、甘さなどまったくない焼き肉を載せたようなものであった。お肉の下にしかれたキャベツの千切りがほのかな甘みとなって、バランスをとっている。それがまた新鮮で楽しい。

 というわけで、経済的に満ち足りて、なおかつ、京都を満喫出来るというお話。京都のお味入門にもなるというお話。

 さて、帰りの新幹線に乗る前にはどこのお弁当を手に入れるか、決めて注文せねば。お土産にしたいところだけど、どうせ、食べちゃうのだろうなあ……。

◎東海道新幹線京都駅下車
ジェイアール京都伊勢丹 老舗弁当売場
京都駅直結、ジェイアール京都伊勢丹地下2階
京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町  ☎075(352)1111(大代表)
営業時間/10時~20時
定休日/不定(11月~12月はなし)
※菱岩、はつだ、紫野和久傳、二傳、いづう、田ごと、吉兆、高台寺和久傳、菊乃井、幾松、辻留、つる家の弁当を扱う。販売日・折数、予約方法など詳細はお問い合わせください
京都円山吉水
京都駅から車で約20分
京都市東山区円山公園弁天堂上  ☎075(551)3995

◆「ひととき」2009年11月号より

 

 


 

 

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