京都は楽しく、美味しい。
しかし、京都は難しい。
人気のある店は予約が大変だ。それだけならまだしも、外部の人間には敷居が高い。そんなことはありません、と京都人は笑う。被害妄想かもしれない。が、気後れさせられる、そんな雰囲気も、ある。感じる。
そんな具合に、京都に複雑な想いを持つのは、私だけではないと思うのだが、とにかく、そんな私の最近のお気に入り、それが、京都駅のジェイアール京都伊勢丹で買えるお弁当である。お弁当といっても、普通に売ってあるものではない。老舗の料亭や仕出し屋のお弁当を、予約しておいて手に入れるというもの。
新幹線で京都駅に着いたところで、受け取る。ついでにすぐ近くのお酒の売り場で、合いそうなお酒も買い込む。
そして、たとえば、嵐山の大堰川(おおいがわ)で屋形船をチャーターして、揺られながら、お弁当とお酒を楽しむ。あるいは、散歩の途中、御所か円山公園あたりのベンチで広げる。
そうそう。円山公園といえば、その上にリーズナブルなお代ながら、数寄屋造りの落ち着く宿がある。
京都、円山の吉水(よしみず)。
今回は運良く、ここの部屋が取れたから、美しくした庭を眺めながら、冷えたビールで楽しんだ。
お弁当は仕出し屋、菱岩(ひしいわ)のそれ。老舗なのは知っていたが、改めて見ると、創業天保初年だと。西暦でいえば、1830年ではないか。200年になんなんとする年月。
まさに伝統の蓄積がその折の中に詰め込まれているような充実感。季節を織り込んだ料理に、思わず目が外の景色と折の中とを行きつ戻りつする。満ち足りる。
まったく、日本のお弁当という文化は素晴らしいものだと改めて思う。どこにでもそのようなものは存在するが、日本のそれほどの洗練は知らない。