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2015年11月28日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

北朝鮮に対してやるべきこと

 北朝鮮との関係も、もっと柔軟にやる必要がある。拉致問題の進展が見られないから硬直してしまうのでなく、もう少しリスクをとってダイナミックにやるべきではないか。そうでないと東アジアでリーダーシップは取れない。北朝鮮との関係を劇的に変えられるとしたらそのリーダーシップが必要だ。2002年9月に小泉純一郎首相が行った北朝鮮への電撃訪問、あれこそ東アジアの外交だ。

 小倉紀蔵氏(おぐら・きぞう)1959年東京都生まれ。東京大学ドイツ文学科卒業。ソウル大学哲学科博士課程単位取得。専門は朝鮮半島の思想・文化、東アジア哲学。NHKテレビ・ラジオハングル講座講師。「日韓友情年2005」実行委員、「日韓文化交流会議」委員などを務めた。現在は京都大学大学院人間・環境学研究科、総合人間学部教授。

 東アジアで一番重要なことは北朝鮮問題の解決だ。これを解決しないと、中国、韓国との問題も解決できない。東アジアで唯一失敗しているのが北朝鮮だ。もし北朝鮮が崩壊すると数百万人の難民が出てくる。東アジア全体の中で取り残された「外部」が北朝鮮なので、これを東アジアの中に包摂していかなければならない。朝鮮半島の中で韓国が繁栄し、北朝鮮が取り残されている。日本がコミットしたことで経済発展した韓国と、日本がコミットしなかったことで取り残された北朝鮮ということもできる。

 北朝鮮との交渉では日本政府はもう少し国益を考えてほしい。拉致は日本の主権が侵犯されたので重要なことだが、拉致だけでは解決できないから、何らかのバーターが必要だ。北朝鮮に対して、経済的な苦境を脱するために日本がお手伝いをするという控えめな立場でコミットすればいい。

 これから重要になるのが街づくりだ。北朝鮮は旧ソ連、旧東ドイツ的な街づくりをしながら東洋的な雰囲気も残したことから、ピャンヤンをはじめ大変美しい街がいくつも残っている。独裁者が作った街ではあるが、この美しさを維持しながら経済を離陸させる中で日本が貢献できることがある。本当なら日本はこういうプロジェクトにかかわっていなければならないのだが、拉致ばかりやっていて、ほかの東アジア諸国に行ったようなお手伝いができていない。

ピョンヤンの金日成広場(iStock)

 重要なのは2002年の小泉首相と金正日総書記が署名した日朝ピョンヤン宣言だ。このときには小泉首相は北朝鮮に対して歴史認識で反省をし、金総書記は拉致で謝罪した。この宣言では歴史的な問題を踏まえた上で、前に進めようという意思があった。ピョンヤン宣言はまだ生きているので、この線に沿って前に進めてほしい。この時使ったのは賠償金ではなく経済協力金という形だった。これは金正日総書記の息子の金正恩も引き継ぐことになる。一方、1965年に締結した日韓基本条約では日本側は歴史認識について反省はしていない。経済協力一辺倒の内容だった。

中国はコントロールの対象

 「日本モデル」が成功するかどうかの鍵は北朝鮮問題にかかっている。あとは中国が自分たちのレジームを作りたがっているので、これをどれだけコントロールできるかだ。中国はコントロールする対象だ。中国の言いなりになるわけにはいかないので、中国の主張に対してどのくらいまでなら譲歩できるのか、日本だけでは決められないので、米国、韓国と協議しながら作っていかなければならない。

 場合によっては北朝鮮も味方につけてやることもあり得る。北朝鮮は中国に対して相当根深い悪感情を持っている。このため、ここでも北朝鮮が鍵になる。朝鮮民族は誇り高い民族なので、中国が圧迫してくれば中国を嫌う。

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