木治さんは、めだかならぬ「二匹目のドジョウ」を狙っている。春先に咲くクリスマスローズを別の集落で栽培し、「クリスマスローズ街道」を作ろうというのだ。めだか同様品種が多く、趣味で栽培している人も全国にいる。値段も高い。
そんなアイデアを実行に移しているのが16年前に大阪から曽爾村に移住した陶芸家の安田賴子さん。趣味からスタートし生活雑器を作ってきたが、作品が茶道家の目に留まったのを機に大ブレーク中だ。ご主人の薦めで「ギャラリー曽賴」と名付けた店舗を開設、陶芸教室も人気を集めている。安田さんのギャラリーにくる観光客の目に留まる道沿いに、周辺住民と共にクリスマスローズを植えていこうというのだ。
クリスマスローズの開花時期は2月から4月。観光客の少ない時季の新しい目玉になると期待している。
「村や観光協会の仕事は観光客をたくさん連れて来るところまで。後それをどう捕まえるかは住民のアイデアと努力次第だ」と観光協会の会長を務める木治正人さん。古民家を改装し、地元産のアユ料理やイノシシ鍋などを出すこだわりの宿を自ら経営する。アユ釣りシーズンには毎朝、川の水位を測ってネットにアップするなど、釣り人など常連客づくりに励む。
もうひとつ知る人ぞ知るスポットがある。高さ200メートル幅2キロに及ぶ屏風岩だ。集落の信仰の対象になっていた巨岩だが、村の先人たちが山の中腹の岩の下に300本の山桜を植えたのだ。これが今や大木となり、4月中下旬には満開になるのだ。
2月のクリスマスローズに始まり、4月の屏風岩の桜、5月からのめだか街道、夏のハイキング、そして秋本番のススキ。先人たちの思いを引き継いだ住民の知恵と努力によって、曽爾村は一年中、観光客でにぎわう場所に変身しようとしている。
(写真・生津勝隆 Masataka Namazu)
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