三遊亭圓朝の「幽霊画」コレクションにほれ込んだ、寿司屋の店主。
「町おこしになる」と、所蔵していた全生庵の住職に働きかけて「谷中圓朝まつり」が始まった。
「まつり」の形や規模は毎年姿を変えながらも30年にわたって続いている。
<谷根千>谷中、根津、千駄木を合わせて「谷根千」と呼ばれている。戦災を免れた寺などが多く残っており、江戸情緒を醸し出している。全生庵へは、東京メトロ千駄木駅が最寄駅となっている。
夏の夕暮れと言えば幽霊である。生ぬるい風が首元を通り過ぎたかと思うと、街路のしだれ柳の葉をかすかに揺らしていく。たしかそこに人影が、と見ても誰もいない。何やら背筋がゾクッとする。
そんな幽霊との出会いを求めてたくさんの人が谷中(やなか)にやってくる。東京の下町情緒を今も色濃く残す町だ。
江戸から明治にかけて活躍した名人落語家の三遊亭圓朝は幽霊が登場する怪談噺を得意とした。圓朝自身が創作した『怪談牡丹燈籠』や『真景累ヶ淵(かさねがふち)』といった怪談噺は今も多くの人を震え上がらせる。その圓朝が谷中に眠っている。
全生庵にある三遊亭圓朝の墓前で。
全生庵・平井正修住職(左)、すし乃池・野池幸三さん(右)
全生庵・平井正修住職(左)、すし乃池・野池幸三さん(右)
墓所のある全生庵は山岡鉄舟が幕末・維新の国事に殉じた人々の菩提を弔うために1883年(明治16年)に建立した臨済宗の寺。首相だった中曽根康弘氏など政治家や大企業の経営者など著名人が参禅に訪れる所として知られる。最近では、安倍晋三首相が、病気で一度政権の座を降りた失意の時代に坐禅に通ったことで、一段と有名になった。