2022年10月1日(土)

地域再生のキーワード

2015年7月30日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 その全生庵には圓朝が遺した幽霊画50幅が所蔵されている。もともと圓朝がコレクションとして集めていたもので、没後に全生庵に寄贈された。中には円山応挙の筆と伝えられるものから、柴田是真、伊藤晴雨、鰭崎英朋といった明治時代の画家によるものまで、様々な構図の幽霊画が収められている。これだけまとまった幽霊画のコレクションは他に例を見ないという。

幽霊画にほれ込んだ寿司屋

すし乃池・野池幸三さん

 そうした幽霊画が、圓朝の命日である8月11日を中心とする毎年8月の1カ月間、「谷中圓朝まつり」と銘打って全生庵で一般公開される。平井正修住職による法要のあと、落語も奉納される。それをお目当てに全国から、落語好きや美術愛好家だけでなく、幽霊見たさの人たちが集まってくるのだ。

 8月に圓朝のコレクションが一般公開されるようになったのは31年前に遡る。

 当時、全生庵が保管する幽霊画は誰に見せるわけでもなく、夏に本堂で虫干しされていたのだという。その素晴らしさに目を奪われた町内のひとりの人物が、これは町おこしの種になる、とひらめき、先代の住職に働きかけたのがきっかけだった。

 野池幸三さん。全生庵前の三崎坂(さんさきざか)を少し下ったところで寿司店「すし乃池」を営む。穴子の握りが有名な谷中の名店だ。当時、開発でどんどん谷中らしい町並みが失われ、外から人がやって来なくなっている事に危機感を抱いていた。何か町おこしの目玉になる「宝」はないか。そう思っていたところに、幽霊画との出会いがあったのだ。

 野池さんは89歳になった今も谷中地区町会連合会会長など町の顔役を務めている。自らのアイデアで始まった「谷中圓朝まつり」の実行委員長も長年にわたって務めてきた。「まつり」の形や規模は毎年姿を変えながらも30年にわたって続いてきた。

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