2024年7月22日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年10月22日

6カ国協議を巡る外交の現場と上層部の埋まらぬ溝

 考えてみれば温家宝の訪朝が成果というのであれば、それは北朝鮮の意向を運んだメッセンジャーとしての役割でしかない。しかも6カ国協議への復帰の意思を示す言葉の一方では、「二国間、または多国間での問題解決」にも言及しているのだからなおさらだ。

 昨夏、私は「週刊文春」誌上でアメリカにも中国にも大きな力を行使してまで北朝鮮の核保有を止める意思はなく、いずれ6カ国協議が形骸化し米朝の二国間交渉か別の枠組みの多国間協議に移行すると書いた。そしてそれが日本の拉致外交の完全敗北につながると警告した。そのとき私の念頭にあった多国間協議は、北朝鮮を核保有国と見なした「核軍縮」の枠組みによる4カ国協議のことだった。その場合、参加国は核保有国の米中露と北朝鮮である。だが、いまのトレンドとしてはむしろ朝鮮戦争の終結という枠組みでの4カ国協議で参加国は米中韓と北朝鮮に移行しつつある。

 見て分かる通り、いずれどの枠組みになっても中国がはずされることはない。私はこのことが、中国が比較的静かにこの問題を見ていることの理由だと思っていた。

 だが、中国を取材してみるとそれだけではない別の問題が浮かび上がってくるのだ。

 前出の中国の外交関係者が語る。

 「まず、中国の対北朝鮮外交にコンセンサスがないということです。なかでも深刻なのは6カ国協議をめぐる外交の現場と上層部との溝です。現場がすでに6カ国協議を無意味だと考えているのに対し、上層部がなぜか強く6カ国協議にこだわっているのです。しかも目的は会議に戻すだけ。戻してどうするのかという戦略もないのが実情です。

 とくに戴秉国国務委員が熱心でそれを李克強副総理が支持しているという構図です。この目的は中国外交のメンツを保つことだけです。6カ国協議は07年、外交部が国務院に提出した年度終結の報告で偉大なる新時期の中国外交成果の3つのうちの筆頭としてあげた外交実績なので、引くに引けないのでしょう。だから、下は白けていますよ」

 中国の対北朝鮮外交に苛立っているのは外交部の現場だけではない。

 「この対北朝鮮外交では、珍しく軍と外交部の意見が一致しているのです。軍は、表向きは〝血の団結〟を忘れるなと言いながら、実際には援助を続けることに反対しています。実際、かつての長老たちとは違い、いまの若手の軍人、とくに軍内で中心的な役割を果たし始めた副参謀長クラスの軍幹部は、ほとんど北朝鮮に対して何の思い入れも持っていません」(軍関係者)

 さらに大きな問題は民間に根強く存在する北朝鮮アレルギーである。

 党機関紙の記者が語る。

 「毎度のことですが、中国と北朝鮮との間に何かの接触があると、その後に必ずネットには、北朝鮮を強烈に非難する書き込みがあふれるのです。このことは上層部ももちろん気づいて十分気にもしているのです。いまの政権は、平気で民意と敵対できるほど強くはないですから影響も大きい」

中国が北朝鮮への友好政策に固執する本当の理由

 いまや対北朝鮮外交は、外交の現場や軍、さらには民意にまでそっぽを向かれている。それなのになぜ中国は友好政策に固執するのか。


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