2022年12月10日(土)

サムライ弁護士の一刀両断

2016年1月22日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

2.報道機関が報道目的で個人情報を用いる場合
個人情報保護法違反にあたらない

 次に、週刊誌で公開されたLINEの画面写真には、個人情報が含まれていると思われますが、個人情報保護法の問題はないのでしょうか。

 個人情報保護法は、事業で個人情報を取り扱っている一定の業者(ほとんどの業者は、何らかの形で個人情報を取り扱っています)に対して、個人情報の適正な取得や、個人情報の利用目的を本人に通知すること、あるいは利用目的に沿った利用などを義務付けています。

 一般の業者であれば、個人情報の含まれるLINEの画面写真を本人に無断で取得して、本人に無断で公開することは、個人情報保護法上問題とされる可能性が高いでしょう。

 しかし、報道機関が個人情報を報道目的で取得したり利用したりする場合、個人情報保護法の多くの規定が適用されません。例えば、新聞報道などで、事件の容疑者の氏名や年齢、職業などが報道されることがありますが、それらを公開することについて本人に了解を取っていない場合でも、個人情報保護法違反にはなりません。

 今回のケースについても、報道機関である出版社に報道の目的があったことには違いないでしょうから、出版社が個人情報保護法に違反することはなさそうです。

3.プライバシー侵害や名誉毀損は?

 では、プライバシー侵害や名誉毀損はどうでしょうか。

 LINEの画面写真を取得したり公開したりすることについて、不正アクセス法や個人情報保護法の問題がないとしても、プライバシー侵害や名誉毀損の問題は、それとは別に考える必要があります。

 まず、「プライバシー侵害」はどうでしょうか。

 「プライバシー」には色々な意味があるのですが、ここでは「普通の人ならば秘密にしておきたいであろう、私生活上の事柄」としておきます

 「不倫をしていること」も「プライバシー」にふくまれるでしょう。

 合理的な理由がないのに、本人に無断でプライバシーを公開することは、違法・不当な行為として、民事上の損害賠償請求や出版差し止めの対象となる可能性があります。

 次に、「名誉毀損」はどうでしょう。

 名誉毀損とは、法律的な意味では、「不特定または多数の人が知ることができる状況下で、具体的な事実を示すことで、ある人の社会的な評価を落とすこと」などとされています。

 誰かの悪口をインターネットの掲示板やSNSに投稿することも、「不特定多数に向けて事実を示して、ある人の社会的な評価を落とした」といえるので、名誉毀損とされる可能性があります。

 この場合、指摘した事実が本当のことであっても名誉毀損は成立します。例えば、ネットの掲示板に「こないだのテスト、A君は0点だった」と書き込んだ場合、たとえ実際にA君が0点を取っていたのだとしても、A君に対する名誉毀損が成立する可能性があります。

 報道が名誉毀損にあたるとされた場合、プライバシー侵害と同じように民事上の損害賠償請求や出版差し止めの対象となる可能性があります。さらに名誉毀損には刑罰も予定されており、刑事責任を追及される場合もあります。

 今回のケースでは、「不倫をしていること」ということは、その人の評価に対して悪影響があると思われます。特に清潔感のあるイメージで売り出しているタレントにとっては影響が大きいでしょう。「不倫をしている」ことを報道することは、仮に事実であったとしても、名誉毀損にあたる可能性があります。

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