2022年11月26日(土)

サムライ弁護士の一刀両断

2016年1月22日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

4.「公益的な報道」か、「私生活上の問題」か

 それでは、本件では、出版社にプライバシー侵害や名誉毀損を理由とした責任が生じるのでしょうか。

 まず、報道機関には報道の自由があります。また、事件や事故について報道することは国民の知る権利に応えるものであり、社会的な意義があると考えられています。

 仮に名誉毀損を含む事実が報道されたとしても、そのような報道が社会的な利益のためにされたものであり、かつ、報道された内容が真実であるような場合には、民事上・刑事上の責任が生じないとされています。プライバシーについても同様に、報道することにプライバシーを保護することを上回るような利益があるような場合には、民事上の責任は問われません。

 今回の報道の対象となったタレントは、両方ともテレビ番組やCMなどに出演して活動しています。ファンにとっては、タレントがどういった人物なのかには興味や関心があるでしょう。また、タレントをCMやイメージキャラクターに起用している会社や自治体などにとっては、タレントのイメージにかかわることに、特に関心があるかもしれません。

 その一方で、たとえタレントであっても、その人が誰と交際しているのか、私生活で家族とどのようなトラブルを抱えているのかというのは、特にプライベートなことだといえます。

 また、タレントとして活動をしていたとしても、一般人であることには変わりません。これが政治家であれば、選挙でその人の性格や人間性も含めて判断することになりますので、私生活の報道にもある程度の社会的な意義がありそうですが、タレントの場合は、政治家などとは少し違うように思われます。

 最近の裁判例を見ますと、昨年6月に、週刊誌が、著名な元野球選手の家庭内トラブルを記事にしたことについて、週刊誌側の名誉毀損やプライバシー侵害による損害賠償責任などを認めた判決がありました。

 判決では、一定の家庭内トラブルがあったことが事実だと認めつつも、それらは家族内の問題に過ぎず、報道することについて「専ら公益に出たものであったとも認められない」などとされています。

 タレントの私生活の報道について、どこまでが許容されるのかは非常に難しい問題ですが、個人的な感想としては、単に「交際している」という報道だけならばともかく、本人同士しか知らないLINEでのやり取りを直接公開するのは、特にプライバシー侵害の程度が高いように思います。

 また、その画面写真を直接公開するのは、非常に生々しいインパクトがありますので、文章だけの報道と比較した場合に、その人の社会的な評価を必要以上に落とす可能性が否定できません。

 そう考えると、週刊誌がLINEの画面写真を掲載して報道したことについては、「名誉毀損やプライバシー侵害の観点から行き過ぎだ」と判断される可能性もあるように思われるのですが、みなさんのお考えはいかがでしょうか。


  
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